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博物館所蔵の深海サメから世界最大級のウオノエ科甲殻類を発見~世界で2例目,太平洋初~(地球環境科学研究院 特任助教 川西亮太)

2020年11月18日

ポイント

●北海道大学総合博物館が所蔵する深海サメ標本の口の中から,ウオノエ科の大型種を発見。
●この種の発見は世界2例目,太平洋では初であり,標準和名「オオウオノエ」を提唱。
●博物館の生物標本は,それらの寄生生物の分布を理解する上で重要な情報源となりうる。

概要

北海道大学大学院地球環境科学研究院の川西亮太特任助教と同大総合博物館の大橋慎平技術補佐員(当時)は,17年前の2003年に東シナ海で採集された同館分館水産科学館所蔵の深海サメ(トガリツノザメ)の口の中に,大型のウオノエ科甲殻類(全長約6cm)が寄生したまま保存されているのを発見しました。

3Dスキャンなどによる詳細な形態観察の結果,これまでブラジル南部の大西洋から一度だけ報告されていたElthusa splendidaであると結論付け,今回の標本を基に標準和名「オオウオノエ」を提唱しました。世界に300種以上が生息するウオノエ科ですが,魚の口の中という極めて限られた空間に寄生する種としては世界最大級です。ブラジル南部は東シナ海と地球の裏側の関係にあり,このウオノエが大西洋から太平洋にかけての深海に広く生息している可能性を示しています。魚類に寄生して暮らすウオノエ科甲殻類は深海起源である可能性が指摘されていますが,深海域は調査を行いにくいため,どのようなウオノエの仲間がどの地域に生息しているのかもよくわかっていません。今後も,深海魚をはじめとした様々な博物館標本を調査することで,謎に包まれたウオノエ科の分布や生態の解明が進むと期待されます。

なお本研究成果は,20201117日(火)公開のSpecies Diversity誌にオンライン掲載されました。

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深海サメの口の中から発見された直後のオオウオノエ