新着情報

ホーム > プレスリリース(研究発表) > 特別天然記念物・アホウドリに2種が含まれることを解明~伊豆諸島鳥島の「アホウドリ」と尖閣諸島の「センカクアホウドリ」は別種としての保全が必要~(総合博物館 准教授 江田真毅)

特別天然記念物・アホウドリに2種が含まれることを解明~伊豆諸島鳥島の「アホウドリ」と尖閣諸島の「センカクアホウドリ」は別種としての保全が必要~(総合博物館 准教授 江田真毅)

2020年11月20日
北海道大学
山階鳥類研究所

ポイント

●伊豆諸島鳥島と尖閣諸島のアホウドリは形態からも区別できる別種であることを確認。
●保全の対象となっている鳥の種内に2種が含まれていることが確認されたのは世界で初めて。
●今後,鳥島の「アホウドリ」と尖閣諸島の「センカクアホウドリ」の独自性を保つ保全政策が重要。

概要

北海道大学総合博物館の江田真毅准教授らと山階鳥類研究所の研究グループは,伊豆諸島鳥島と尖閣諸島に由来する国の特別天然記念物・アホウドリの形態を比較しました。両地域のアホウドリは遺伝的・生態的な違いから別種の可能性が指摘されてきました。しかし,尖閣諸島での調査が困難なために両地域に由来する鳥の形態学的な検討ができず,別種かどうかの結論は保留となっていました。

本研究では,尖閣諸島から鳥島に移住してきた鳥(尖閣タイプ)と鳥島生まれの鳥(鳥島タイプ)のくちばしの長さや体重などを計測し,比較しました。その結果,鳥島タイプの鳥は尖閣タイプの鳥よりほとんどの計測値で大きい一方,尖閣タイプの鳥のくちばしは相対的に長いことがわかりました。本研究で明らかになった形態的な違いと,これまでに知られていた遺伝的・生態的な違いから,両タイプの鳥は別種とするべきと結論しました。アホウドリのように絶滅のおそれがある鳥の種内において,このような隠蔽種がみつかったのは世界的にも初めてです。

これまで「アホウドリ」は1種の特別天然記念物として保全されてきました。しかし,伊豆諸島鳥島と尖閣諸島の「アホウドリ」は別種であるため,それぞれの独自性を保つように保全していくべきと考えられます。今後,鳥島タイプをこれまで通り「アホウドリ」と呼び,尖閣タイプの鳥は「センカクアホウドリ」と呼ぶことを提案します。2002年以来,尖閣諸島における調査は実施されていないため「センカクアホウドリ」の現状は良くわかっていません。早急な調査の実施が望まれます。

なお,本研究成果は,20201119日(木)にオンライン公開のEndangered Species Research誌に掲載されました。

本研究は,環境省,東京都,米国魚類野生生物局,三井物産環境基金,公益信託サントリー世界愛鳥基金,および文部科学省科学研究費補助金(課題番号15K14439,研究代表:北海道大学大学院水産科学研究院教授・綿貫豊)等の助成を受けて行われました。

詳細はこちら

201120_prpic.jpg
伊豆諸島鳥島の「アホウドリ」成鳥(左から鳥島タイプメス,鳥島タイプオス,尖閣タイプメス,尖閣タイプメス)。鳥島タイプは尖閣タイプより全体的に体が大きい(写真撮影:今野美和)。