2020年12月1日
北海道大学
東京工業大学
東京大学
ポイント
●ニホンウズラを使って性分化に働く遺伝子群の発現プロファイリングを実施。
●性分化に働く遺伝子には共通した発現パターンがあることを発見。
●未解明な点が多い鳥類の性分化研究の進展と家禽産業への応用に貢献。
概要
北海道大学大学院理学研究院の黒岩麻里教授らの研究グループは,東京工業大学,東京大学の研究グループと共同で,ニホンウズラ(以下,ウズラ)の性分化に働く遺伝子群の発現プロファイリングを行った結果,性分化に働く遺伝子には共通した発現パターンがあることを発見しました。
鳥類の性決定・性分化には未解明な点が多く残されており,特に遺伝子研究は大きく遅れを取っていますが,その理由の一つに鳥類のモデル動物としてニワトリを使用している点が挙げられます。ニワトリは体が大きいため飼育スペースを取る上,性成熟を迎えるのに長い時間を要するため,次の世代の獲得だけでなく研究にも長い時間を要します。
研究グループは,この問題を克服するためにニワトリよりも小型で性成熟が早いウズラ(ニワトリと同じキジ目)を取り入れた研究を開始しました。研究にあたっては,ウズラの生殖腺(精巣または卵巣になる元の器官)を性決定時期,性決定直後,性分化後の3つの発生段階に分けて採取した後,発現している遺伝子のメッセンジャーRNAを網羅的に解読したデータを発生段階と雌雄で比較し,プロファイリングしました。既に知られているオス分化(精巣分化)遺伝子やメス分化(卵巣分化)遺伝子についてプロファイリング結果を確認したところ,性分化に働く遺伝子は共通した発現パターンを示すことがわかりました。加えて,ウズラは鳥類の性分化研究に大変有用であることが示されました。
本研究成果によって鳥類の性分化研究の進展及び新しい知見が得られることで,家禽産業への応用への貢献が期待されます。また,ヒトでは遺伝的な性と生殖器官などの身体の性が一致しない性分化疾患が知られており,その原因として性分化に働く遺伝子の関与が考えられていますが,性分化に働く遺伝子が全て見つかっているわけではないため,未知の遺伝子の発見への貢献も期待されます。
なお,本研究成果は,2020年11月30日(月)公開のScientific Reports誌に掲載されました。
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