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難問「巡回セールスマン問題」を新型コンピュータで解決~アメーバの探索能力から着想を得てアナログ回路で実現。超スマート社会での活躍に期待~(量子集積エレクトロニクス研究センター 教授 葛西誠也)

2020年12月2日
北海道大学
Amoeba Energy

ポイント

●組合せ最適化問題をアメーバ生物「粘菌」の行動に学んだ新コンピュータ「電子アメーバ」で解決。
●「電子アメーバ」は実社会の難しい課題をシンプルかつコンパクトなアナログ回路で解決可能。
●IoTデバイスなどに組込める小型で省電力のチップとして超スマート社会での活躍に期待。

概要

北海道大学量子集積エレクトロニクス研究センターの葛西誠也教授らの研究グループは,Amoeba Energy株式会社と共同で,アメーバ生物である粘菌の探索行動から着想を得た新型アナログコンピュータを開発し,代表的な組合せ最適化問題「巡回セールスマン問題」を解くことに成功しました。

物流配送計画や勤務スケジュール作成など社会の様々な課題は,最適な変数の組合せを探し出す「組合せ最適化問題」と呼ばれる数学的問題を解くことで解決できます。しかし,従来型デジタルコンピュータは,組合せ最適化問題の解決を苦手としています。このため,近年は量子コンピュータを含めたイジングマシンと呼ばれる新型コンピュータの提案が相次いでますが,この方式では解くべき問題をマシンが扱える形式に変換することが大変難しく,実用上のネックとなっていました。

研究グループは,この問題点を回避できる,アメーバが巧みに栄養物質を見つけ出す行動に着目して開発されたアナログ回路からなる新方式コンピュータ「電子アメーバ」によって,最適化問題の中でも難度が高い巡回セールスマン問題の解を迅速に探し出すことに成功しました。生物が自然淘汰を経て獲得した探索能力をシンプルかつコンパクトな電子回路で再現した電子アメーバは,制約や要求が変わり続ける実社会の難しい課題の解決に貢献するとともに,身のまわりで活躍するIoTデバイスなどに組込み可能な小型で低消費電力の新原理コンピュータにつながるものと期待されます。

なお,本研究成果は,2020年1127日(金)公開のScientific Reports誌に掲載されました。

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開発した電子アメーバの回路模式図。左側がアメーバコア,右側の格子状の回路が抵抗クロスバー。