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プロバイオティクスで子牛を下痢から守る~発酵哺乳飼料による子牛の腸炎防御効果を証明~(獣医学研究院 准教授 今内 覚)

2021年1月18日
北海道大学
NOSAI道東
総合研究機構畜産試験場
雪印種苗株式会社
ノーステック財団

ポイント

●粉ミルクを発酵させた高品質で安全なプロバイオティクス哺乳飼料を開発し,子牛の哺乳に応用。
●発酵哺乳飼料が子牛の下痢症を軽減し,腸炎による死亡例を減少させることを証明。
●発酵哺乳飼料を用いた子牛の下痢症対策により,健康な子牛の育成と生産性の向上に貢献。

概要

北海道大学大学院獣医学研究院(岡川朋弘特任助教),北海道ひがし農業共済組合(NOSAI道東・茅先 史獣医師),北海道立総合研究機構畜産試験場(小原潤子研究員),雪印種苗株式会社による研究グループ(代表:北海道大学大学院獣医学研究院今内 覚准教授)は,粉ミルクを発酵させたプロバイオティクス哺乳飼料を開発し,子牛に給与することで下痢症を軽減,腸炎による死亡例を減少させることを証明しました。

畜産業においては長年,生乳などを原料とする発酵乳が子牛の下痢症対策に利用されてきました。子牛の下痢症は,酪農業において生産性を低下させる重要な問題です。特に,生まれたての子牛は免疫機能が未熟なため感染性の下痢症にかかりやすく,複数の病原体が重複感染して重篤化し,死亡する例が多くみられます。しかし,従来の発酵乳は「発酵品質が不安定であること」,「雑菌が増殖し不衛生であること」などから,発酵乳を継続して利用しているのは一部の農家に限られています。また,発酵乳による下痢症の防御効果について,子牛で実験的に証明した研究はありませんでした。

そこで本研究では,発酵品質が安定で雑菌の混入がない「高品質で安全な発酵哺乳飼料」として,代用乳を原料にした発酵代用乳(fermented milk replacer, FMR)を開発し,ロタウイルス感染による子牛下痢症モデルを用いた実験及び下痢発生農場の子牛を用いた大規模な実証試験で,FMRが子牛の下痢症に対して及ぼす効果を検証しました。その結果,FMRの給与が子牛下痢症モデルにおいて腸炎の重症化を防ぐことが示唆されました。さらにFMRの給与は,農場における子牛の腸炎発生数や死亡例を減少させ,子牛の下痢症対策に有効であることが証明されました。

今後は,本研究成果を広く普及させることに努め,プロバイオティクスを用いた子牛の下痢症対策を推進することで,健康な子牛の育成や畜産業の生産性向上への貢献が期待されます。

なお,本研究成果は2021年1月5日(火)公開のVeterinary Microbiology誌に掲載されました。

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ロタウイルス感染による子牛下痢症モデルにおける発酵代用乳(FMR)の効果