2021年2月16日
ポイント
●一般に熱を伝えやすいとされる単結晶が,多結晶よりも熱を伝えないことを発見。
●結晶固有の数nm周期の超格子が熱伝導を著しく低減。
●低熱伝導材料を設計するための大きな指針を与える成果。
概要
北海道大学電子科学研究所のジョヘジュン助教と太田裕道教授ら及び国内外の研究機関からなる国際共同研究グループは,一般に熱を伝えやすいと考えられている界面のない単結晶に,数周期の超格子と呼ばれる構造を導入することで,熱を伝えにくいはずの多結晶よりも熱を伝えなくなることを発見しました。
電気を通さないセラミックの熱伝導は,原子の振動の伝播で起こるため,結晶の界面で大きく減衰します。一般に,結晶の方向が揃っていない多結晶には多くの界面が含まれているため,多結晶は単結晶よりも低い熱伝導率を示します。研究グループは,ある結晶に固有の数nm周期で二種類の成分が積み重なった「超格子」構造を有するセラミックの単結晶薄膜を作製し,超格子に直交方向,平行方向の熱伝導率の比較をするとともに,多結晶の熱伝導率との比較も行いました。
その結果,単結晶であるにも関わらず,超格子に直交方向の熱伝導率は多結晶よりも低いことを発見しました。今回の発見は,単結晶内の異なる成分間のが熱伝導を著しく低減することを示唆しており,低熱伝導材料を設計するための大きな指針を与えると期待されます。
なお,本研究成果は,日本時間2021年2月16日(火)公開のAdvanced Materials Interfaces誌に掲載されました。
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