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液体に浸すだけで成分を分析できるペーパーデバイスを開発~場所を問わない簡単な分析を実現しニューノーマル時代の科学教育への貢献に期待~(工学研究院 教授 渡慶次学)

2021年3月9日

ポイント

●液体試料に浸漬するだけで特定成分を検出可能な紙製検査チップを開発。
●従来必要だった高価なピペットと紙繊維への検出試薬の固定化が不要で簡便かつ迅速な検出を実現。
●自宅,診療所,川辺,海,生産現場での現場分析や遠隔の科学実験への展開に期待。

概要

北海道大学大学院総合化学院博士後期課程・日本学術振興会特別研究員の小松雄士氏,同工学研究院の石田晃彦助教,渡慶次学教授らの研究グループは,液体試料に浸漬するだけで成分濃度を測定可能なペーパー分析デバイスを開発しました。

この検査チップは,3cm四方のろ紙に水をはじく性質があるインクで印刷して作製された小型・軽量・薄型の分析デバイスです。ろ紙の特定の領域がインクで囲まれており,流路の役割を果たします。流路の一端に浸漬エリアがあり,これを液体試料に浸漬すると,液は毛細管現象によって流路に沿って流れます。流路の途中には成分を検出する専用試薬が染み込んでおり,試料液がここに到達すると反応が起きて成分濃度に応じて発色します。このような検査チップは,ペーパー分析デバイスと呼ばれ,世界中で多くの研究が行われていますが,そのほとんどは極微量の液体試料を正確に採取して分析デバイスに導入する必要があり,高価なピペットとそれを操作する技術が必要なため,誰でも簡単に利用できるものではありませんでした。

今回,研究グループは流路のデザインを検討し,ピペットによる試料導入が不要かつ簡便で誰でもどこでも成分濃度を測定できる安価なペーパー分析デバイスの開発に成功しました。発色後のペーパー分析デバイスは,専用アプリをインストールしたスマートフォンで撮影すると,分析結果を数値化できます。研究グループは,発色を数値化するための計算方法も既に考案しています。検出試薬は自由に選択でき,流路に塗布して乾燥させるだけでよいため,医療診断や食品・環境検査だけでなく,ニューノーマル時代の科学教育の新たなツールになることが期待されます。

なお,本研究成果は202134日(木)公開のACS Sensors誌にオンライン公開されました。

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今回開発したペーパー分析デバイスが実現する場所を問わない成分分析