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オショロコマと外来カワマスの交雑を確認~希少在来魚の保全政策に貢献~(地球環境科学研究院 准教授 小泉逸郎)

2021年3月15日

ポイント

●希少在来魚オショロコマと北米原産のカワマスが野外で交雑していることをDNA解析から証明。
●雑種も子孫を残していることが示唆され,在来種の遺伝子汚染が懸念。
●日本では北海道にのみ生息する絶滅危惧種オショロコマの保全政策を考える上で貴重な知見。

概要

北海道大学大学院環境科学院博士後期課程(在籍時)の福井 翔氏,同博士前期課程(在籍時)の澤田史香氏,同大学院地球環境科学研究院の小泉逸郎准教授と北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場の春日井潔研究主幹らの研究グループは,日本では北海道だけに生息する絶滅危惧種であるオショロコマ(サケ科イワナ属魚類)と北米原産の外来カワマスが野外で交雑していることをDNA解析から明らかにしました。また,両者の雑種(雑種第1世代)は妊性があり,雑種第2世代目以降も存在していることも確認されました。さらに,ある交雑個体は同じ河川に生息する別種であるイワナ(アメマス)のミトコンドリアDNAを保有していました。今回の調査ではカワマスとアメマスの交雑個体は確認されませんでしたが,過去には複数の河川で報告されています。

これらの事実から,人為的に移入されたカワマスが北海道の在来イワナ属2種の純粋な遺伝子を撹乱する(遺伝子汚染)可能性が示唆されました。オショロコマとカワマスは外見が似ており,特に雑種2世代目以降では判別が難しく,知らない間に遺伝子汚染が広がることも考えられます。カワマスは美しい魚で味も良く,一部の地域では釣魚としても人気が高いですが,在来生態系に与える影響も考慮して適正に管理する必要があります。本研究成果は希少在来種の保全政策を立てる際に有用であるのはもちろん,水産資源やレクリエーションとしての需要がある外来種の管理を考える上でも重要になります。

なお,本研究成果は,タカラ・ハーモニストファンド助成を受け,2021225日(木)公開のZoological Science誌にオンライン掲載されました。

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オショロコマ(左),交雑個体(中),カワマス(右)。
オショロコマは顔が丸く背びれに模様がない。カワマスは顔が尖っており背びれに黒い虫食い模様がある。雑種は両者の中間の形質を示す。