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イヌの血管肉腫における新しい治療標的を発見!~ヒトの血管肉腫の治療への応用も期待~(獣医学研究院 助教 青島圭佑)

2021年3月15日

ポイント

●ヒストン脱メチル化酵素KDM2Bがイヌの血管肉腫の新しい治療標的になることに着目。
●ヒストン脱メチル化酵素の阻害剤GSK-J4が副作用なく血管肉腫の進行を遅らせることを発見。
●希少ながんである,ヒトの血管肉腫の治療への応用も期待。

概要

北海道大学大学院獣医学研究院の青島圭佑助教,同獣医学院博士課程のKevin Christian Montecillo Gulay氏らの研究グループは,ヒストン脱メチル化酵素に着目したイヌの血管肉腫に対する新しい治療標的を発見しました。

血管肉腫とは血管を作る血管内皮細胞の悪性腫瘍がん)であり,イヌでは高い確率で発生します。有効な治療法が無く,手術を行っても1年後の生存率は10%以下という予後の悪い非常に恐ろしい病気です。

本研究では,イヌの血管肉腫と正常な血管内皮細胞を用いて,細胞内に存在する遺伝子とタンパク質の量を比較しました。その結果,ヒストン脱メチル化酵素の一つであるKDM2Bというタンパク質が,イヌの血管肉腫に多く存在していることを発見しました。そして,遺伝子工学技術を用いて培養皿の上でKDM2Bの機能を失わせると,血管肉腫のがん細胞が死ぬことを明らかにしました。また,ヒストン脱メチル化酵素の阻害剤GSK-J4の投与により,マウスに移植した血管肉腫の進行を遅らせることにも成功しました。

現在,血管肉腫の治療に対して広く使われている抗がん剤のドキソルビシンとは異なり,KDM2Bという一つのタンパク質を標的にする治療法は,副作用が少なく,安全な治療薬と成りうることが期待されます。また,血管肉腫はヒトにも見つかるがんですが,非常に稀であり,その治療法は確立されていません。本研究成果は,イヌだけでなく,ヒトの血管肉腫に対する新しい治療法開発への貢献も期待されます。

なお,本研究成果は,2021年3月10日(水)公開のJournal of Genetics and Genomics誌にオンライン掲載されました。

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ヒストン脱メチル化酵素KDM2Bの機能を失わせることによりがん細胞が死滅