2021年3月25日
北海道大学
東京大学大気海洋研究所
ポイント
●海に流入する氷河の前に形成されるプルーム(融解水の湧昇流)の直接観測に成功。
●プルーム中の海水温度と塩分が,従来考えられていたよりも急激に変化することを発見。
●グリーンランドで海に流入する氷河の変動と,氷河融解が海洋生態系に与える影響の理解に貢献。
概要
北海道大学北極域研究センターのEvgeny A. Podolskiy助教,漢那直也研究員(現東京大学大気海洋研究所),同大学低温科学研究所の杉山 慎教授らの研究グループは,グリーンランドの氷河と海洋の境界で見られるプルーム中での直接観測に成功し,これまで主に数値シミュレーションから予想されていたプルームの動態を,観測によって初めて明らかにしました。
水温,塩分,深度センサーを氷河前のプルームに直接投入して,海水特性の変化を高頻度でモニタリングした結果,氷河の融解や氷河湖の決壊に伴う淡水の流出,潮汐変動,フィヨルド内外の海水交換などにより,従来考えられていたよりもダイナミックに海水特性が変化することが明らかになりました。プルームはフィヨルドのポンプとして海水をかき混ぜ,氷河末端の水中融解とカービングの促進,栄養豊富な海水の循環など,氷河変動と海洋環境に大きな役割を果たします。本研究により,フィヨルドの海水循環モデルの高度化や氷河・海洋境界現象の理解が進み,グリーンランドにおける氷河変動と海洋生態系の理解への貢献が期待されます。
本研究成果は,2021年3月25日(木)公開のCommunications Earth & Environment誌にオンライン掲載されました。
なお,本研究は,科学研究費助成事業,ArCS北極域研究推進プロジェクト,ArCSII北極域研究加速プロジェクトの助成を受けて実施されました。
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