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オホーツク海の高い生物生産は海氷の融解によることを解明~フロート観測による初の融解期の正味生物生産量の推定~(低温科学研究所 教授 大島慶一郎,准教授 西岡 純)

2021年3月29日

ポイント

●自動昇降フロートによる酸素計測により,オホーツク海で初めて正味の生物生産量の測定に成功。
●春の植物プランクトン増殖による生物生産は,海氷が融解した海域で圧倒的に大きいことが判明。
●オホーツク海の高い生物生産とそれに伴うCO2吸収の解明や将来予測に繋がる研究。

概要

北海道大学大学院環境科学院修士課程2年の岸紗智子氏と,同低温科学研究所の大島慶一郎教授・西岡 純准教授らの研究グループは,自動昇降する酸素センサー付きプロファイリングフロートにより,オホーツク海の広範囲を13年間にわたって連続観測を行い,海水中に溶けている酸素量の変動から,初めて正味の生物生産量(純群集生産量)を見積もることに成功しました。その見積もりによると,純群集生産量は春,直前に海氷が存在していた海域で圧倒的に大きい値になることが示され,春の植物プランクトンの顕著な大増殖(春季ブルーム)は海氷融解によってもたらされていることを初めて定量的指標をもって明らかにしました。この原因として,密度(塩分)の低い海氷融解水によって作られる強い成層(密度差)の他に,海氷が融解することで放出される物質(鉄分であることが有力)が重要であることも示唆されました。今回見積もられた海氷融解域での純群集生産量の値は,世界で最も顕著な春季ブルームが起こる南大洋氷縁域にも匹敵するもので,オホーツク海の高い生物生産を定量的な指標で示した結果でもあります。

本研究は科学研究費補助金・基盤研究S(課題番号17H01157; 20H05707)の助成を受けて実施されました。なお,本研究成果は,2021326日(金)公開のGeophysical Research Letters誌にオンライン掲載されました。

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北半球の春の海面クロロフィルa濃度分布。暖色になるほどクロロフィルa濃度が高い。SeaWiFSより。