2021年3月30日
北海道大学
関西大学
ポイント
●酸化鉄(Fe3O4)で報告されていた値を大きく超えるトンネル磁気抵抗効果(TMR効果)を実現。
●Fe3O4が示す特徴的な相転移であるVerwey転移を制御しTMR効果との関連性を解明。
●今後の酸化物を主体としたスピントロニクス技術の進展に期待。
概要
北海道大学大学院総合化学院修士課程の安井彰馬氏,同工学研究院の長浜太郎准教授,島田敏宏教授,東京大学大学院理学系研究科の岡林 潤准教授及び関西大学システム理工学部の本多周太准教授の共同研究グループは,酸化鉄を用いた巨大な負のトンネル磁気抵抗効果(TMR効果)を実現しました。
トンネル磁気抵抗効果(TMR効果)は,スピントロニクス分野の根幹をなす重要な現象で,多くのデバイスで活用されています。多くは金属磁性体を用いたものであり,酸化物磁性体の活用を目指した研究が進められています。特に,代表的な鉄の酸化物であるFe3O4は大きな負のスピン分極率を持つと期待されていましたが,これまで大きなTMR効果は観測されていませんでした。
今回,Fe3O4の組成を精密に制御することで−120%に達するTMR効果を実現し,また,Fe3O4特有の相転移であるVerwey(フェルべ)転移との関連を解明しました。本研究成果は,新たな酸化物スピントロニクスデバイス開発の足がかりとなると期待されます。
なお,本研究成果は2021年3月15日(月)公開のPhysical Review Applied誌に掲載されました。
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(a)作製したトンネル磁気抵抗素子の断面電子顕微鏡写真。矢印は各層の磁化の向きを示す。
(b)Fe3O4を用いたTMR効果のグラフ。外部磁界(横軸)によって磁化の方向を平行・反平行に制御すると電気抵抗(縦軸)が変化。一般的な(正の)TMR曲線とは上下が反転している。