2021年4月13日
ポイント
●STAP-1はBCR-ABLタンパク質を安定化し,細胞増殖,生存関連遺伝子発現を調節。
●STAP-1のヒト慢性骨髄性白血病株での発現はCa2+/転写因子NFATによって制御。
●STAP-1を標的としたヒト慢性骨髄性白血病に対する新しい抗がん剤開発が期待。
概要
北海道大学大学院薬学研究院の松田 正教授らの研究グループは,慢性骨髄性白血病(CML:Chronic myelogenous leukemia)細胞中のがん遺伝子産物BCR-ABL融合タンパク質にアダプタータンパク質Signal-transducing adaptor protein-1(STAP-1)が及ぼす影響や,CML細胞でSTAP-1が高発現する理由を解析しました。
CMLは血液がんのひとつで,フィラデルフィア染色体という特殊な染色体異常により新たに産生される異常なBCR-ABL融合タンパク質が原因で発症することが知られています。本研究では,CMLがん細胞においてSTAP-1がどのようにBCR-ABL融合タンパク質と関連するかを明らかにしました。
STAP-1はBCR-ABL融合タンパク質と直接結合することで,その蛋白安定化に寄与します。また,STAP-1はBCR-ABL及び転写因子STAT5と複合体を形成することで細胞増殖や細胞生存を促進します。
一方,CML細胞ではSTAP-1が高発現しており,その理由として,STAP-1発現がCa2+シグナルや転写因子NFATによって増強されることもわかりました。STAP-1タンパク質によるBCR-ABL融合タンパク質の安定化調節や発現の分子機序の詳細を解明できれば,CMLの新しい抗がん剤開発に繋がると考えられます。
なお,本研究成果は2021年4月9日(金)公開のBiochemical and Biophysical Research Communications誌に掲載されました。
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