2021年4月28日
ポイント
●血糖値の増加により視床下部でプロスタグランジン類が産生され血糖値を低下させることを発見。
●逆に肥満ではプロスタグランジン類の生成が血糖値を増加させる作用があることを解明。
●糖尿病の予防・治療法開発に期待。
概要
北海道大学大学院獣医学研究院の戸田知得助教らの研究グループは,視床下部(全身代謝・体温・食欲などを司る脳の一部)において神経細胞の細胞膜リン脂質からプロスタグランジンが生成され,血糖値を低下させること,その一方で,肥満ではプロスタグランジンの生成が血糖値の調節を悪化させることを証明しました。
膵臓から分泌されるインスリンが血糖値を低下させるホルモンであることはよく知られていますが,脳も血糖値の調節に重要です。脳内脂質代謝は脳の機能を調節することが知られていますが,そのメカニズムは十分に解明されていません。
本研究グループは,グルコースを投与して血糖値が高くなったときに視床下部の脂質組成にどのような変化が起こるかを調べたところ,アラキドン酸を含む細胞膜リン脂質が低下していること,そしてアラキドン酸を原料とするプロスタグランジンが増加していることを発見しました。また,血糖値が高くなった時に視床下部のプロスタグランジンが生成されないと,血糖値が増加したままになることがわかりました。さらに,肥満をひきおこす脂肪含量の高いエサでマウスを飼育すると,同じように視床下部でプロスタグランジンが生成され,このときは脳内炎症を誘導する作用があることを発見しました。肥満したときに視床下部のプロスタグランジンが生成されないと脳内炎症と血糖値の増加が起こらないことを明らかにしました。
本研究成果は,2021年4月20日(火)公開のNature Communications誌に掲載されました。
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