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植物が栄養環境に応じて花を咲かせる仕組みを解明~環境負荷の低い効率的な施肥と作物収量増産に期待~(理学研究院 准教授 佐藤長緒)

2021年5月11日
北海道大学
東京大学
京都大学
名古屋大学
埼玉大学

ポイント

●植物は生育環境中の窒素量に応じて,開花のタイミングを調節していることを実証。
●FBH4タンパク質のリン酸化修飾が,窒素量に応じて開花を調節するスイッチであることを解明。
●土壌栄養環境に左右されずに安定した収量を得られる作物品種の開発に期待。

概要

北海道大学大学院理学研究院の佐藤長緒准教授,東京大学大学院総合文化研究科の阿部光知教授,京都大学大学院理学研究科の伊藤照悟助教,名古屋大学大学院生命農学研究科の木羽隆敏准教授,埼玉大学大学院理工学研究科の高木 優教授らの研究グループは,ワシントン大学の今泉貴登教授らとの国際共同研究で,植物が生育環境中の窒素量に応じて開花のタイミングを調節する仕組みを明らかにしました。

植物にとって窒素はもっとも必要量が多い栄養素で,窒素が欠乏すると植物は大きく成長できません。ただし,窒素を過剰に与えると,葉の成長が促進される一方で,花が咲きにくくなることが古くから知られており,農作物の施肥管理においても重要な点になっています。しかし,こうした窒素に応答した開花制御の分子機構は長年謎のままでした。

本研究では,モデル植物シロイヌナズナを材料に,窒素量に応じた植物の開花制御に,転写因子FBH4タンパク質の働きが重要であることを発見しました。そして,FBH4タンパク質の機能を調節する方法として,リン酸化修飾が鍵となることを見つけました。通常,植物体内でFBH4タンパク質は多くのリン酸化修飾を受けていますが,この度合いが窒素欠乏条件で育てた植物体内では顕著に減少していました。このFBH4タンパク質のリン酸化修飾が,まさに開花のブレーキとなっていて,このブレーキが外れると「花咲かホルモン」である「フロリゲン」が増加し,開花が誘導されることがわかりました。

本研究で得られた知見は,土壌中の窒素栄養環境に左右されずに成長と開花のバランスを保ち,安定した収量を得られる作物品種の開発に役立つことが期待されます。

本研究成果は,202157日(金)公開のProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌に掲載されました。

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野生型シロイヌナズナ株及びFBH4遺伝子とそのホモログ遺伝子の機能を抑制した変異株の開花時期の違い