新着情報

ホーム > プレスリリース(研究発表) > セラミックス合成過程の直接観測と計算モデル~機能性セラミックス材料の論理的合成設計をめざして~(工学研究院 准教授 三浦 章)

セラミックス合成過程の直接観測と計算モデル~機能性セラミックス材料の論理的合成設計をめざして~(工学研究院 准教授 三浦 章)

2021年5月10日
北海道大学
東京都立大学
広島大学
山梨大学

ポイント

●混合粉末の加熱によるYBa2Cu3O6+xの固相合成反応過程をX線回折と電子顕微鏡で直接観測。
●出発原料の様々な組合せの反応エネルギーを計算することで,反応過程の駆動力を理解。
●機能性セラミックス合成の論理的な設計指針。

概要

北海道大学大学院工学研究院の三浦 章准教授,ローレンツバークレー研究所のクリストファー・バーテル博士,東京都立大学理学部の後藤陽介助教,広島大学大学院先進理工系科学研究科の黒岩芳弘教授,株式会社日立ハイテクの白井 学博士,山梨大学大学院総合研究部の長尾雅則准教授,カリフォルニア大学バークレー校材料科学工学部のガーバード・セダー教授,ミシガン大学材料科学工学部のウェンハオ・スン助教らのグループは,複数の出発試料の混合粉末を加熱することによるセラミックス材料の生成過程を可視化し,固相合成反応を理解するための計算モデルを構築しました。

様々な機能性材料やエネルギー材料に用いられているセラミックス材料は,複雑な組成を持つものが多く,その合成過程は明らかになっていません。この過程を調べるため,1987年に発見された高温超伝導体YBa2Cu3O6+x(通称YBCO)を採用し,放射光X線回折,電子顕微鏡と第一原理計算によって直接観測しました。出発原料の様々な組合せの反応エネルギーを計算することで,反応過程の駆動力を理解する計算モデルを提案しました。

YBCOは,酸化イットリウム(Y2O3),過酸化バリウム(BaO2),酸化銅(CuO)の粉末混合物を800-1000度に加熱することで合成されます。YBCOの反応過程を上記の計算モデルで直接観測することによって,反応初期では,反応エネルギーが最も大きい過酸化バリウムと酸化銅が反応することで中間生成物が形成されること,反応後期では,中間生成物が溶融し,酸化イットリウムと反応することでYBCOが生成されるというメカニズムが明らかになりました。

固相合成過程を論理的に理解することで,複雑な組成をもつ様々な新規機能性材料の合成反応を効率的に設計することが期待できます。

本研究成果は,2021年5月5日(水)公開のAdvanced Materials誌に掲載されました。

詳細はこちら


YBCO=YBa2Cu3O6+xの固相合成反応の調査