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心理的ストレスが腸内細菌を攪乱する機序をはじめて解明~うつ病の脳腸相関を介した予防・治療法開発に期待~(先端生命科学研究院 准教授 中村公則,教授 綾部時芳)

2021年5月11日

ポイント

●腸の自然免疫αディフェンシンによる腸内細菌の制御が脳に影響することを解明。
●精神的ストレスによる脳腸相関のメカニズムを解明。
●うつ病など神経系障害の腸をターゲットとする予防や治療の進展に期待。

概要

北海道大学大学院先端生命科学研究院の中村公則准教授,綾部時芳教授らの研究グループは,小腸のパネト細胞が分泌する自然免疫の作用因子であるαディフェンシンが心理的ストレスによって減少することを明らかにしました。さらに,うつ状態を起こすようなストレス下では,αディフェンシンの減少によって腸内細菌叢と腸内代謝物が異常となり,腸内環境の恒常性が撹乱することをはじめて明らかにしました。

研究グループの北海道大学大学院生命科学院博士後期課程鈴木康介氏らによるうつ病モデルである,慢性社会的敗北ストレスモデルマウスを用いた本研究は,自然免疫と腸内細菌が形成する腸内環境に焦点を当て,うつ病の全く新しいメカニズムを明らかにした画期的成果です。

これまで心理的ストレスが腸内細菌叢の異常に関与することは知られていましたが,そのメカニズムは不明でした。また,心理的ストレスとαディフェンシンの関係も不明でした。この研究は,心理的ストレスがαディフェンシン分泌量を減少させ,腸内細菌叢と代謝物の組成が異常になることを明らかにしました。さらに,このストレス負荷による腸内環境の撹乱を,αディフェンシンの投与によって予防・改善できることを示しました。

この結果は,心理的ストレス下において脳腸相関の恒常性を維持することの重要性を明らかにしたものであり,今後,うつ病の予防や治療法開発に貢献することが期待されます。

なお,本研究成果は,2021510日(月)公開のScientific Reportsに掲載されました。

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