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アルツハイマー病の脳内炎症を抑制する共役リノール酸を発見~認知症の予防と早期治療への活用が期待~(薬学研究院 特任教授 鈴木利治)

2021年5月13日

ポイント

●共役リノール酸cis-9,trans-11 CLAを摂取したアルツハイマー病マウスモデルで脳内炎症を抑制。
●c9,t11 CLAの経口摂取が脳内炎症を抑制するサイトカインを誘導することを発見。
●認知症の最大患者数を有するアルツハイマー病の予防と早期治療への活用が期待。

概要

北海道大学大学院薬学研究院認知症先進予防解析学分野(株式会社デメンケア研究所寄附講座)の駒野宏人客員教授(岩手医科大学元教授),鈴木利治特任教授らの研究グループは,岩手医科大学薬学部,東京大学大学院薬学系研究科,京都大学大学院農学研究科,東京理科大学理工学部,大阪産業技術研究所との共同研究で,共役リノール酸(CLA)の一種cis-9,trans-11 CLA(以下c9,t11 CLA)を摂取したアルツハイマー病マウスモデルで脳内炎症を抑制するサイトカインが誘導されることを見いだしました。

我が国では10年前に認知症患者数は400万人を超え,その70%はアルツハイマー病とされ予防法・治療法の開発が健康・医療の問題だけでなく,社会経済的にも解決すべき喫緊の課題となっています。しかしながら,アルツハイマー病に対する根本治療薬は開発途中の段階であり,科学的エビデンスに基づいた予防法も少ないのが現状です。

アルツハイマー病はアミロイドβ(Aβ)が引き起こす神経機能障害が根本原因と考えられていますが,認知機能障害の憎悪には脳内に沈着するAβが誘発する炎症が関わっていることが明らかになりつつあります。これまでに複数の異性体を含む共役リノール酸(CLA)混合物は,末梢で様々な生理活性を示す事が報告されてきましたが,中枢の脳神経系で機能を示す異性体の同定は未解明でした。今回,本研究チームは,高純度のCLA異性体c9,t11 CLAをアルツハイマーマウスモデルに食餌させた結果,c9,t11 CLAの摂取がアルツハイマー病の原因因子Aβが引き起こす脳内炎症を予防する効果を明らかにしました。研究成果はアルツハイマー病の予防と早期治療への活用が期待されています。

本研究成果は,2021512日(水)公開のScientific Reports誌にオンライン掲載されました。

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老年性認知症に対する中枢-抹消多方面アプローチ