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土木構造物の短寿命の原因究明にはじめて成功~土木構造物の長寿命化への貢献に期待~(工学研究院 名誉教授 森吉昭博)

2021年5月14日

ポイント

●アスファルト舗装及びコンクリート構造物の短寿命の原因解明に成功。
●これら2つの構造物の亀裂,砂利化,非晶質化,骨材の飛び出し等の原因の解明。
●世界中のアスファルト舗装及びコンクリート構造物の長寿命化の進展に期待。

概要

北海道大学大学院工学研究院の森吉昭博名誉教授らの研究グループは,アスファルト舗装及びコンクリート構造物の短寿命の現状とその原因を解明しました。

各種の損傷が発生したアスファルト舗装及びコンクリート構造物の試料を日本や海外で採取し,計測を行ったところ,アスファルト舗装では砂利化(黒いアスファルト成分が消失),ブリスタリング(表層(5cm)が気温が上がる夏季に直径3040㎝,高さ3-5㎝の膨張),滑走路表層の大規模剥離(長さ8m,幅4m,厚さ5㎝)が発生しており,コンクリート構造物では劣化(コンクリート中のカルシウム分が消失または他の物質へ変化),層状亀裂(コンクリートの表面近くで平行に発生する亀裂幅の狭い亀裂),砂利化(コンクリートがうどん粉(直径:0.05mm)のような細かい物質に変化する),非晶質化(コンクリート中の結晶成分が非晶質物質に変化する),骨材の飛び出し(ポップアウト,滑走路:50,000個)が融雪剤散布後数時間の単位で発生していることを確認しました。これらの各種損傷は世界中で不思議で不可解な現象とされてきたものです。

そこで本研究では,市販のセメントが水と混合すると瞬時に嫌な臭いが発生することを偶然発見したことから,フタル酸エステルが加水分解した物質(2-ethyl-1-hexanol:2E1H)が空気中にも存在し,それが劣化に関連していると仮定し,実験室内に夏季の気候条件を再現して実験を行いました。

その結果,外気温の変動に伴い,構造物自身が呼吸をするように空中の湿気や様々な極微量の有機物を内部に短期間に取り込み,セメント中及び空中の2か所に存在する極微量の有機物が短寿命化に影響していることを明らかにしました。また,市販のセメント中に極微量に存在するフタル酸エステル,リン酸化合物,AE減水剤の含有量を調べたところ,それぞれ0.0012%,0.12%0.25%と違いがありましたが,各物質がコンクリートの劣化に及ぼす影響はほぼ同一でした。つまり,フタル酸エステルはコンクリートの劣化や亀裂に対して,極微量でも著しい影響を及ぼすことが明らかになりました。

本研究の成果は世界中で短寿命化したアスファルト舗装及びコンクリート構造物の長寿命化,補修時期や補修の深さを的確に判定することを可能にしたことで,新設の構造物の品質管理や長寿命化に寄与する様々な技術開発への応用が期待されます。

なお,本研究成果は,2021514日(金)公開のPLOS ONE誌に掲載されました。

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