新着情報

ホーム > プレスリリース(研究発表) > 子供の鉛中毒は母親の生活の質を悪化させる~鉛汚染がもたらす影響の新機軸~(保健科学研究院 教授 遠山晴一,獣医学研究院 博士研究員 中田北斗,助教 中山翔太,教授 石塚真由美)

子供の鉛中毒は母親の生活の質を悪化させる~鉛汚染がもたらす影響の新機軸~(保健科学研究院 教授 遠山晴一,獣医学研究院 博士研究員 中田北斗,助教 中山翔太,教授 石塚真由美)

2021年5月19日

ポイント

●鉛汚染地域の母親404人と家族の血中鉛濃度,世帯収入等を健康関連の生活の質データと比較。
●母親の鉛濃度と子供の鉛濃度は正の相関,母親自身の鉛濃度と母親の社会生活機能には負の相関。
●母親の鉛濃度に関わらず,子供の鉛濃度は母親のバイタリティ及びメンタルヘルスと負の相関。

概要

北海道大学大学院保健科学研究院の遠山晴一教授と,北海道大学大学院獣医学研究院の中田北斗博士研究員,中山翔太助教,石塚真由美教授,ザンビア大学獣医学部のジョン・ヤベ講師らの研究グループは,ザンビア共和国カブウェ鉱床地域の404世帯の母親と家族(最大2名までの子供と父親)の血液試料,年齢や世帯収入などの社会経済的データ,質問表SF-36を用いた健康関連の生活の質データを収集し,鉛中毒がもたらす生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)への影響を調査しました。

母親の血中鉛濃度は,その子供の血中鉛濃度と有意な正の相関を示した一方で,子供を年齢別に分けた場合,未就学期及び就学期の子供は母親及び父親よりも有意に高い鉛濃度を示しました。次に,世帯構成メンバーの血中鉛濃度,母親の年齢,世帯収入,居住地域データをもとに統計解析を行いました。同一世帯から2名の子供の血中鉛濃度が得られている場合は,その平均値を子供の世帯平均血中鉛濃度として用いました。その結果,子供の世帯平均血中鉛濃度及び未修学期の子供の血中鉛濃度は,母親のバイタリティ及びメンタルヘルスのスコアと有意な負の相関を示しました。また,就学期の子供の血中鉛濃度は,母親のメンタルヘルスのスコアのみ有意な負の相関を示しました。一方,母親自身の血中鉛濃度は社会生活機能のスコアとの間に有意な負の相関を認めました。

これらの結果から,子供の血中鉛濃度の上昇,すなわち鉛暴露は,母親の血中鉛濃度に関わらず母親のバイタリティ及びメンタルヘルスに負の影響を及ぼすことが明らかとなりました。

なお,本研究成果は,2021年4月15日(木)公開のChemosphere誌にオンラインで掲載されました。

詳細はこちら


現地の医療従事者と共に,母親への質問表調査を実施