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植物を超えた!人工光合成に新たな手法~カーボンニュートラルに向け注目される人工光合成のキープロセスの開発に成功~(電子科学研究所 特任教授 三澤弘明)

2021年6月23日

ポイント

●金銀合金ナノ粒子と厚さ30nmの半導体薄膜により全可視光に応答可能な光電極を開発。
●植物を超える水を電子源とした光電流の発生,及びそれに伴う酸素発生効率を実現。
●従来の金ナノ粒子を用いた電極と比べ,2倍以上の効率で光エネルギーを化学エネルギーに変換。

概要

北海道大学電子科学研究所の三澤弘明特任教授らの研究グループは,金の反射フィルム上に厚さ約30nmの酸化チタンを成膜し,その上に金銀合金ナノ粒子を担持した光電極を用い,植物を超える可視光全域の光吸収と,それに伴う光電流発生,及び水酸化反応の高効率化に成功しました。

金属ナノ粒子は特定の色(波長)に共鳴して吸収・散乱する局在表面プラズモン共鳴(以下,プラズモン)と呼ばれる現象を示し,また反射膜上の酸化チタン薄膜もその膜厚に応じた波長の光を閉じ込めることが可能です。これまで,プラズモンと酸化チタン層内に閉じ込められた光が強く相互作用して一体となる「強結合」と呼ばれる状態を作ると,光化学反応効率が大きく増大することがわかっていました。しかし,水分解反応を実用レベルまで高効率化するためには,そのメカニズムの理解が不可欠でした。

本研究では,1)光の相互作用を能動的に制御して強めることで,「超強結合」と定義される領域にまで到達し,2)これを水の酸化反応に用いることで従来の光電極の2倍以上の効率で光エネルギーを化学エネルギーに変換することに成功しました。太陽光中の可視光を有効利用して化学エネルギーへ変換する技術はカーボンニュートラルの実現へ向けて不可欠であるとされており,本成果のような全く新しい科学概念の導入によりそのブレイクスルーが期待されます。

なお,本研究成果は, 2021617日(木)公開のAngewandte Chemie International Edition誌にオンライン先行公開され,近日中に出版される予定です。

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金銀合金ナノ粒子/酸化チタン/金フィルム構造を用いた高効率水分解反応