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肺へ選択的に遺伝子送達可能なナノカプセルの開発に成功~肺疾患の治療法開発に期待~(工学研究院 准教授 磯野拓也)

2021年6月24日

ポイント

●遺伝性疾患などの治療に応用できる核酸を肺へ選択的に送達可能なナノカプセルを開発。
●ナノカプセルの主要構成成分である脂肪族ポリエステルは市販試薬から一段階で合成可能。
●様々な肺疾患の治療応用に期待。

概要

北海道大学大学院薬学研究院の原島秀吉教授,佐藤悠介助教及び同工学研究院の佐藤敏文教授,磯野拓也准教授らの共同研究グループは,肺に対して選択的に遺伝子送達可能なナノカプセルの開発に成功しました。

mRNAやsiRNAなどの核酸を治療薬とする核酸医薬は,従来医薬品では治療が困難だった様々な遺伝子疾患を根治できる可能性を秘めており,低分子医薬と抗体医薬に次ぐ第三の医薬品として近年大きな注目を集めています。核酸医薬を実用化するためには治療薬本体となる核酸を目的患部に効率的かつ選択的に送り届ける必要があり,これを可能にするナノカプセルの開発がキーポイントとされてきました。これまでのところ,ナノカプセルとして脂質ナノ粒子が広く用いられており,実際に肝臓をターゲットとした核酸の送達が実用化されています。一方,肝臓以外の臓器へ核酸を選択送達できるナノカプセルは非常に少ないのが現状です。例えば,肺疾患は肺がん,嚢胞性繊維症,肺高血圧症,肺繊維症など多岐にわたり,肺への選択的な核酸送達は臨床上きわめて大きな意味を持ちます。

共同研究グループは,アミノ基で修飾した脂肪族ポリエステル(APE)を構成要素とするナノカプセルがmRNAを肺へ選択的に送達できることを見出しました。多くの場合,こうしたナノカプセルを血中投与すると肝臓で捕捉されてしまうため他の臓器へ送達することは非常に難しいとされています。一方,今回開発したナノカプセルは,標的化リガンドという特別な仕掛けを必要とせずに肺選択的な核酸送達を実現しています。今後,このナノカプセルを活用した様々な肺疾病に対する治療法確立が期待されます。

なお,本研究成果は,2021年6月7日(月)公開のMaterials Horizons誌にオンライン掲載されました。

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新しく開発した核酸送達ナノカプセルの概要図