2021年7月16日
ポイント
●西部北太平洋に高い生物生産をもたらす親潮中層水の将来を予測。
●今までよく調べられていなかった冬季に親潮中層水が顕著な経年変動を示すことが判明。
●親潮中層水は温暖化と18.6年周期潮汐により,オホーツク海起源水の割合が変化することで変動。
概要
北海道大学低温科学研究所のメンサ ビガン特任助教と大島慶一郎教授の研究グループは,西部北太平洋の高い生物生産を支えている親潮中層水が,温暖化と18.6年周期潮汐変動の両方に強く影響を受けることを明らかにしました。これらの変動の大きな要因は,親潮中層水を作る2つの水塊,西部亜寒帯水とオホーツク海中層水の混合の割合の変化によります。長期的には低温のオホーツク中層水の占める割合が40年で30%も減少して親潮中層水は高温化しており,これは温暖化による海氷生成の減少によりオホーツク海を起点とするオーバーターンが弱化したことによると考えられます。潮汐が強い年代は,より低温のオホーツク海中層水の流出が増加し,潮汐の強さは温暖化と逆に作用(低温化)することもわかりました。
本研究によって,潮汐が弱くなる2020年代中盤からの10年間は弱化する潮汐の効果と温暖化の効果が相乗して一気に大きな変化(親潮中層水におけるオホーツク海中層水の割合が減り,水温が高くなる)が起こりうることも予想されます。
なお本研究成果は,2021年7月15日(木)公開のScientific Reports誌にオンライン掲載されました。
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親潮中層水の形成とその経年変動の模式図。親潮中層水は西部亜寒帯水(図では暖色系)とオホーツク海中層水(寒色系)の混合により形成される。混合の割合(図では色の違いで示す)が変わることで親潮中層水の性質(温度等)が変わる。