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アジアの熱帯性海草藻場の詳細な分布と保全状況を解明~年5%の割合で減少する貴重な生態系を早急に保全する必要性を指摘~(北方生物圏フィールド科学センター 教授 仲岡雅裕,博士研究員 須藤健二)

2021年7月9日

ポイント

●東~東南アジアの熱帯性海草藻場の2000年~2020年の分布状況を解析。
●約6割の藻場が減少傾向にあり,全体では年間約5%の速度で面積が減少していることが判明。
●既存の海洋保護区による保全は十分ではなく,今後一層の保全対策を進める必要性を指摘。

概要

北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの須藤健二博士研究員,Angela Quiros博士研究員,仲岡雅裕教授らの研究グループは,東~東南アジアに分布する熱帯性の海草藻場の多くが2000年代以降減少していること,現状の海洋保護区による保全が不十分であることを明らかにしました。

海草藻場は,多様な魚介類の生息場所となると共に水質を浄化する機能をもつなど,沿岸域で重要な役割を果たしています。しかし,海草藻場は世界各地で減少しています。研究グループは東~東南アジアの13か国・地域を対象に,2000年以降に記録された海草藻場の分布に関する情報を新たに2,720件収集し,海草藻場面積の時間的変化を解析するとともに,海洋保護区による保全状態を国・地域ごとに比較しました。その結果,多くの海草藻場では2000年以降も面積が減少しており,その減少率は平均で年4.7%であることが判明しました。また,厳密に運用されている海洋保護区に含まれる海草藻場はどの国・地域でも5%以下と非常に少ないことがわかりました。

本研究の成果は,これまで情報が欠損していた東~東南アジアの海草藻場をはじめとする海洋生態系やその海洋生物多様性の保全計画の策定に大きく貢献することが期待されます。

なお,本研究成果は2021年78日(木)公開のFrontiers in Marine Science誌にオンライン掲載されました。

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熱帯性海草藻場の水中写真(Photo: 河内直子)