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"生命の色素"合成に秘められた謎を解明~鍵となるcalix[3]pyrroleをついに捉えた~(創成研究機構化学反応創成研究拠点 准教授 猪熊泰英)

2021年7月29日

ポイント

●未踏化合物calix[3]pyrroleの合成に世界で初めて成功。
●ひずみに誘起されるマクロサイクルの環拡大反応を発見。
●"生命の色素"と呼ばれるポルフィリン環形成に関わる100年来の謎を解明。

概要

北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD),同大学院工学研究院の猪熊泰英准教授らの研究グループは,calix[3]pyrroleと呼ばれる環状化合物の合成に世界で初めて成功し,世界中で盛んに行われているポルフィリン合成における長年の謎を解明しました。

ヘムやクロロフィルに代表されるポルフィリン化合物は"生命の色素"とも呼ばれ,呼吸や光合成に欠かすことのできない化合物です。この化合物は発見から100年以上にわたって研究されてきましたが,未だに解明されていない謎がありました。その謎とは,「ポルフィリンは4つのピロールから選択的に生成し,ピロールが3つのものは全く見つからない」というものです。研究グループは,この謎を解く鍵を握るとされてきたcalix[3]pyrroleの合成に挑戦し,「カルボニルひも」と呼ばれる化合物を使って世界で初めて合成を達成しました。

3つのピロールから形成されるcalix[3]pyrroleは,環のサイズが小さいために非常に歪んだ構造をしていました。そのため,ポルフィリン合成に使われる酸性条件下でひずみエネルギーに誘起される特異な環拡大反応を示すことがわかりました。驚くべきことに,酸性条件においてわずか10秒でピロールが6つからなる大きな環へと変化し,最終的には数時間かけてポルフィリンと同じ4つのピロールからなる環へと変遷することがわかりました。このひずみ誘起環拡大反応こそが,3つのピロールで形成されるポルフィリン類縁体が見つからなかった理由でした。この発見は同時に,アニオン包接などの機能が知られる巨大マクロサイクルを合成するための環拡大反応という新たな手法の発見にもつながりました。

本研究成果は,公開のJournal of the American Chemical Society誌に掲載されました。

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ポルフィリン合成の謎を解明する鍵となったcalix[3]pyrroleの合成