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心臓サルコイドーシスにおける突然死リスクを解明~より多くの心臓サルコイドーシス患者を突然死から救うことに期待~(医学研究院 准教授 永井利幸)

2021年7月1日

ポイント

●心臓サルコイドーシス患者における突然死リスクについて検討。
●本邦ガイドラインの植込み型除細動器(ICD)推奨患者よりも多くの患者に適応がある可能性を報告。
●より多くの日本人心臓サルコイドーシス患者を突然死から救うことができるようになると期待。

概要

北海道大学大学院医学研究院博士課程の竹中 秀氏,小林雄太氏,同循環病態内科学教室永井利幸准教授,安斉俊久教授らの研究グループは,日本の指定難病の一つである,心臓サルコイドーシス患者における突然死予防のための植込み型除細動器(ICD)の適応について検討し,日本人心臓サルコイドーシス患者においても米国ガイドライン同様,多くの患者にICD植込みの適応がある可能性を報告しました。これにより,日本でのガイドラインへの寄与,さらにより多くの心臓サルコイドーシス患者を突然死から救うことができるようになると期待されます。

心臓サルコイドーシス患者では,心室頻拍・心室細動(VT/VF)などの心室性不整脈による突然死をきたすことが比較的多く,突然死リスクが高い患者はICD植込みの適応となります。

米国心臓協会/米国心臓病学会/米国不整脈学会(AHA/ACC/HRS)ガイドラインでは,左室駆出率>35%かつ恒久的ペースメーカー適応,左室駆出率>35%かつ恒久的心臓MRIで遅延造影を有する心臓サルコイドーシス患者に対するICD植込みをクラスⅡa推奨(データ,見解から有用,有効である可能性が高い)としています。しかし日本での患者を対象とした検討は極めて少ないため,2016年日本循環器学会ガイドラインでは同適応の推奨は明記されておらず,日本におけるAHA/ACC/HRSガイドラインの妥当性検証が求められてきました。

今回の研究では,日本人心臓サルコイドーシス患者188例において,AHA/ACC/HRSガイドラインにおけるICD推奨の妥当性に関して検証しました。結果,クラスⅡa推奨患者の中でも左室駆出率>35%かつ恒久的ペースメーカー植込みの適応となる患者,左室駆出率>35%かつ心臓MRIで遅延造影を有する患者については,クラスⅠ推奨(有用であるというエビデンスがあるか,あるいは見解が広く一致している)患者とほぼ同等の致死性心室性不整脈あるいは心臓突然死の年間発生率であることが明らかになりました。

これらの結果から,日本人の心臓サルコイドーシス患者においても,AHA/ACC/HRSガイドラインにおけるICD推奨は妥当である可能性が示唆され,今後の日本でのガイドラインに寄与することが期待されます。

なお,本研究成果は日2021630日(水)公開の米国心臓病学会誌JACC: Clinical Electrophysiology誌にオンライン掲載されました。

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