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ショウジョウバエを活用したがん研究の総説論文を発表~新規がん治療法の開発に期待~(遺伝子病制御研究所 教授 園下将大)

2021年7月5日

ポイント

●ショウジョウバエの研究によって明らかになった,腫瘍が発生する機序を紹介。
●がん患者の遺伝子型を模倣したモデルハエとそれらを用いた最新の創薬研究の紹介。
●新しい研究手法や治療法とハエの研究基盤の組み合わせにより,がん研究の一層の加速に期待。

概要

北海道大学遺伝子病制御研究所/大学院医学研究院がん制御学分野の山村凌大博士研究員,大塩貴子助教,園下将大教授らの研究グループは,ショウジョウバエの活用により明らかになった腫瘍の発生や悪性化の機序や様々ながん遺伝子型モデルハエの紹介,そしてそれらを用いた最新の創薬研究について概説した総説論文を発表しました。

がんの疾病負荷は世界的に年々増加しており,世界の全死因の第2位となっています。これを解決すべく,過去数十年にわたり,培養がん細胞や遺伝子改変マウスなどの哺乳類実験系が,がん研究の発展に大きく貢献してきました。最近ではこれらに加え,ゼブラフィッシュ,線虫,ショウジョウバエなどが,がん研究を加速させる新たな実験動物として注目されています。このうちハエは,個体表現型を指標とする遺伝学的実験が容易で,安価・迅速に研究を実施できるなど,哺乳類を補完する多数の利点を備えています。さらに当研究グループは,ハエが哺乳類と類似した形質転換機序や薬物応答性を示すことも見出し,個体レベルでの新規治療標的の同定や治療薬候補の同定にハエが大変有用であることを示しました。

本総説論文では,これまでにハエのがん研究における貢献について,遺伝子組換えハエの作出や薬物スクリーニングなどの具体例を挙げながら解説しています。

なお,本研究成果は,2020124日(金)公開のCancer Science誌にオンライン掲載されました。

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A)ショウジョウバエは,高さ10cmほどのバイアルで飼育。バイアルの下部に見える黄土色のものは,寒天で固めた餌。(B)ハエは餌の上に卵を産みつけ,24時間後には卵から幼虫がかえる。(AC7日ほど経つと,バイアルの壁に幼虫やサナギがたくさんみられるようになる。(D)飼育11日後には,成虫がサナギからかえり始める。このようにハエは短期に次世代を得ることができ,小さなスペースで迅速に研究を推進することが可能。