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南極の氷河の下で海と氷を直接観測~熱水掘削によって氷床融解のメカニズムを解明~(低温科学研究所 教授 杉山 慎,准教授 青木 茂)

2021年7月12日

ポイント

●南極ラングホブデ氷河で熱水掘削を行い,棚氷下の海洋環境を直接観測。
●棚氷下の全域で水温・塩分・循環を明らかにし,氷の底面が融ける量を算出。
●南極氷床の急激な変動を駆動する,棚氷底面の融解メカニズムを解明。

概要

北海道大学低温科学研究所の杉山 慎教授,青木 茂准教授,箕輪昌紘氏(当時)らの研究チームは南極ラングホブデ氷河を掘削し,厚さ234~412mの棚氷の下に広がる海を直接観測しました。その結果,棚氷底面での氷融解とそのメカニズムを明らかにしました。

近年,南極氷床が氷を失っており,海水準の上昇につながる地球環境変動として注目されています。氷床の周縁では氷が海に張り出して棚氷を形成し、その底面が海の熱で融けるプロセスが氷床変動の引き金と考えられています。しかし,厚い棚氷の下へ海水がどのように流入し,どれだけ氷を融かしているのか,その測定は非常に困難で理解が遅れています。本研究では,研究チームが開発した熱水掘削システムを用いて,ラングホブデ氷河の棚氷を4地点で掘削し,棚氷下の海水温,塩分,循環を直接観測しました。その結果,海水は結氷温度よりも最大1℃ほど暖かく,棚氷の全域で氷の融解が示されました。また棚氷の全域における測定によって,これまで予想されていた海洋循環の確認に成功しました。測定された貴重なデータは,棚氷下の海洋循環と底面融解の物理プロセスを検証し,氷床数値モデルの精緻化に貢献するものです。

本研究成果は,202179日(金)公開のNature Communications誌にオンライン掲載されました。

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観測を行ったラングホブデ氷河と熱水掘削の様子