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化学テロ現場で神経剤を簡単に検知できる紙製検査チップを開発~化学テロへの迅速な対処による安全・安心の確保に期待~(工学研究院 教授 渡慶次学,助教 石田晃彦)

2021年7月29日
北海道大学
科学警察研究所

ポイント

●サリンやVXなどの神経剤を簡便かつ速やかに検知可能な紙製検査チップを開発。
●海外でテロに使用された構造未知の神経剤(ノビチョク)を含む様々な神経剤の検知が可能。
●神経剤による被害拡大の防止や解毒剤の速やかな投与を実現する新たなツールとして期待。

概要

北海道大学大学院総合化学院博士後期課程・科学警察研究所の山口晃巨研究員,同大学院工学研究院の石田晃彦助教,渡慶次学教授,科学警察研究所の宮口一室長らの研究グループは,化学テロ現場で神経剤を簡単に検知できる紙製検査チップを開発しました。

この検査チップは,2cm×4cmのろ紙に水をはじく性質のインクで印刷して作製された小型・軽量・薄型の分析デバイスです。ろ紙の特定の領域がインクで囲まれており,流路の役割をします。流路の半ばの試料導入エリアに液体試料を滴下した後,流路末端に展開液を滴下すると,液は毛細管現象によって流路に沿って流れます。流路の途中には神経剤を検出する一連の反応を起こす複数の試薬が染み込ませてあり,液がそれぞれの試薬に到達する度に一連の反応が起きて神経剤の有無に応じて発色します。サリンに代表される神経剤の現場検知ツールは,世界中で多くの研究・開発が行われていますが,そのほとんどは難揮発性(VX等)や構造未知(ノビチョク)の神経剤を検知できない,神経剤とある種の農薬の区別が困難,複数の試薬を用いる多段階の操作と時間がかかるなど,適用範囲が限られており,取り扱いが難しいものでした。

今回,本研究グループは,流路のデザインを工夫することによって,煩雑な操作を必要としない,あらゆる神経剤を農薬等と区別して目視で容易に判別できる鮮明な発色として検知することができる安価な紙製検査チップの開発に成功しました。本デバイスは防護服を着用した専門部隊による化学テロ発生現場における使用,VXやノビチョクなどを用いた個人攻撃テロの捜査,搬送患者や救急隊員に付着した神経剤の除染の確認など,高度化しボーダーレス化した現代のテロ対策において新たなツールとなることが期待されます。

なお本研究成果は,2021年7月29日(木)にACS Applied Bio Materials誌にオンライン公開されました。

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専門部隊(ファーストレスポンダー)による活用イメージ