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熱をもって熱ショック・酸化ストレスを制す~熱ショックによるアスパラガス茎抽出成分のウシ卵巣細胞機能へのさらなる増強作用を発見~(農学研究院 教授 高橋昌志)

2021年9月22日
北海道大学
株式会社アミノアップ

ポイント

●アスパラガス茎抽出成分によるウシ卵巣細胞の熱ショックタンパク質70の特異誘導を発見。
●EAS添加により活性酸素の減少,抗酸化物質の増加及びプロゲステロン合成を促進することを発見。
●暑熱ストレス下でも生殖に関連する細胞機能の維持,または増強させる可能性に期待。

概要

北海道大学大学院農学研究院の高橋昌志教授らの研究グループは,株式会社アミノアップと共同で北海道が国内生産量1位を占める農産物であるアスパラガスの廃棄茎部から酵素分解・抽出・精製された機能性食品として知られるStandardized extract of Asparagus officinalis stem(EAS)の卵巣細胞への効果を明らかにしました。

これまでEASは体細胞において熱ショック刺激を与えることなく熱ショックタンパク質(HSP)70を特異的に誘導することが知られていましたが,生殖関連細胞への作用は未解明でした。研究グループはウシ卵巣細胞である卵丘-顆粒層細胞を使った検証を行い,その結果,既報と同様な熱ショック非依存的にHSP70の特異的誘導が引き起こされたことに加え,EASは細胞内の酸化ストレスを低減したとともに,卵巣内の黄体から分泌される生殖ホルモンであるプロゲステロンの産生の増加作用を示しました。一方で,HSP70活性の阻害によって活性酸素増加による酸化ストレスが増大しました。興味深いことに,EASと熱ショック処理を併用することで,熱ショック処理単体でみられた活性酸素の増加に伴った核DNA損傷などの細胞傷害が顕著に低下し,同時に細胞内抗酸化因子であるグルタチオンの顕著な増加がみられ,酸化ストレスを減少させるEASの効果が相乗的に増強されることが明らかになりました。

これまで,暑熱ストレスは細胞内酸化ストレスを増加させ,哺乳動物の生殖機能を低下させることが知られていましたが,EASと暑熱感作との相乗作用を活用することで,暑熱ストレス下でも生殖に関連する細胞機能の維持,または増強させる可能性が期待されます。

本研究成果は,2021913日(月)公開のScientific Reports誌にオンライン掲載されました。

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牛卵巣細胞へのEASによる熱感作との相乗的なHSP70誘導とプロゲステロン産生促進