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薄膜の電気抵抗が厚さに依存して周期的に振動する現象を発見~室温で従来の数万倍の2.5ナノメートル周期の大きな変化~(工学研究院 助教 迫田將仁)

2021年11月22日

ポイント

●"ビヨンド・ナノ"制御の超薄膜の作製に成功。
●モット絶縁体とパイエルス転移の協奏による発現メカニズムを提唱。
●従来の数千倍の変化を室温・常圧で達成したことによりスケーリングデバイスへの展開に期待。

概要

北海道大学大学院工学研究院の迫田將仁助教,丹田 聡教授,同大学大学院理学研究院の延兼啓純助教,同大学触媒科学研究所の下田周平技術職員らのグループは,薄膜の電気抵抗が厚さに依存して周期的に振動する現象を発見しました。従来のサイズ効果と比較して桁外れに変化が大きく,室温で数千倍,低温では10桁にも迫る巨大な変化を見せます。

私たちの世界の物質は10の23乗個もの膨大な原子の配列で構成されています。これらを構成する元素によって,物質の性質は大きく変化します。では,その性質は試料の大きさにはよらないのでしょうか?物質を原子数個が入る程に小さくしても,元の性質を保っていられるのでしょうか?このような疑問に対して,これまでビスマス(Bi)を代表とした多くの研究がなされ,サイズに依存して電気抵抗が変動する現象などが発見されてきました。しかし,豊富な性質を示す化合物においては,複数の元素の精密制御が難しいことから未知の領域が多くありました。

私たちは数ナノメートル(1ナノメートル(nm)=1mmの百万分の1)の原子が見えるくらいに薄い試料(超薄膜)を作製しました。分子線エピタキシー法を用いて,界面をピコメーター(1ピコメートル(pm)=1mmの十億分の1)のオーダーで制御し表面粗さが199pmCaRuO3超薄膜の作製に成功しました。これにより,電気抵抗率が薄膜の厚さに対して,2.5nmの周期で変動する現象を発見しました。最大で,室温と低温でそれぞれ3桁と9桁以上もの大きな変化をします。従来のサイズ効果では説明できない大きな変化を示し,化合物に特有の電子の状態が寄与していることを示しました。

室温・常圧での実用的な変化率を達成し,今後種々のデバイスへの展開が期待されます。基礎研究への"スケール"の概念の導入により,将来的に新しい機能性材料の設計が期待されます。

なお,本研究成果は,2021年11月17日(水)公開のPhysical Review B誌に掲載されました。

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物質を原子数個分まで薄くすると,その性質はどう変化するのだろうか?