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宇宙の氷微粒子における原始有機分子合成のレシピが明らかに~宇宙における分子の進化解明に大きな前進~(低温科学研究所 教授 渡部直樹,助教 日高 宏)

2021年11月4日

ポイント

●超高真空・極低温の擬似的な宇宙環境下で氷表面に存在する微量の有機分子の分析に成功。
宇宙のさまざまな環境で観測されている原始的な有機分子ギ酸メチルの材料と合成の手順を解明。
宇宙における有機分子生成の全容解明への道筋になることが期待。

概要

北海道大学低温科学研究所の渡部直樹教授,日高 宏助教,同大学院理学院博士後期課程の石橋篤季氏らの研究グループは,新たに開発した極低温氷表面の非破壊・超高感度分析装置を用い,星や惑星誕生以前の宇宙空間に浮遊する極低温の氷微粒子上で生じる,原始的な有機分子合成の様子を詳細に観測することに成功しました。

極低温の宇宙空間には生命の起源にも繋がる多くの有機分子が見つかっていますが,それらがどのような材料でどのような過程を経て合成されたのか,その詳細はわかっていませんでした。研究グループはこれまでの研究から,有機分子合成には氷微粒子表面の化学反応が鍵を握ることを突き止めていましたが,今回の研究では,宇宙の様々な場所で観測されており,より複雑な有機分子の前駆体と考えられている代表的な原始的有機分子ギ酸メチル(HCOOCH3)について,氷表面で生成される際の材料物質と合成の順序を世界に先駆けて明らかにしました。本研究の手法を用いることによって,今後,宇宙の極端環境下におけるより多くの有機分子合成のレシピが明らかになり,宇宙における分子進化の全容に迫ることが期待されます。

なお,本研究成果は,20211029日(金)公開のAstrophysical Journal Letters誌に掲載されました。

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新たに開発した,非破壊・超高感度分析装置による氷表面分析のイメージ図。
本手法を用いることで,宇宙に浮遊する極低温氷微粒子上での原始有機分子(ギ酸メチル)合成のレシピが明らかになった。背景は実際の暗黒星雲の写真。