2021年11月19日
ポイント
●電気スイッチ一つで絶縁体と超伝導体の繰り返し切り替えに成功。
●電解液を使わない全固体素子で,液漏れの心配がない安全設計。
●超伝導体を使った新しいデバイス応用の可能性を切り開く成果。
概要
北海道大学電子科学研究所の張 習博士研究員と太田裕道教授らの研究グループは,電気スイッチ一つで絶縁体を超伝導体に繰り返し切り替えることに成功しました。
高温超伝導体として知られるイットリウム・バリウム・銅複合酸化物の導電性は,絶縁体から超伝導体まで,酸素含有量によって大きく変化することが知られています。近年,絶縁体と超伝導体を切替える方法として,電気的に酸素含有量を調節する方法が提案されました。しかし,電解液を用いることから,液漏れしないよう素子を密閉しなければならないという応用上の問題がありました。
そこで本研究では,空気中で,固体電解質を利用して電気的に酸素含有量を変化させました。その結果,絶縁体から高温超伝導体まで,繰り返し切り替えることに成功しました。電解液を使わないことから,液体が漏れる心配もなく,真に応用に適した方法です。高温超伝導体を使った新しいデバイスへの応用が期待されます。
なお,本研究成果は,2021年11月4日(木)公開のACS Applied Materials & Interfaces誌に掲載されました。
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液体を用いず,電気スイッチ一つで絶縁体を高温超伝導体にすることができるデバイスの仕組み。空気中,300℃で,デバイスに-10ボルトを印加すると酸素欠陥δが減少して高温超伝導体に,逆に+10ボルトを印加するとδが増加して絶縁体になる。