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全身性エリテマトーデスの抑うつ症状に細胞老化が関与~老化細胞を標的とした新しい治療戦略への期待~(保健科学研究院 教授 千見寺貴子)

2021年11月26日

北海道大学
札幌医科大学

ポイント

●抑うつ症状を起こした全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスで,脳内に老化細胞が蓄積。
●老化細胞除去薬フィセチンの経口投与によって,脳内の老化細胞や炎症が減少し,抑うつ症状が改善。
●老化細胞除去が,SLEに伴う抑うつ症状の新しい治療法へと発展することが期待。

概要

北海道大学大学院保健科学研究院の千見寺貴子教授,札幌医科大学医学部解剖学第2講座の齋藤悠城講師,藤宮峯子教授らの研究グループは全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスの抑うつ症状に脳内に蓄積する老化細胞が影響していること,さらに老化細胞を取り除くことで抑うつ症状が改善されることを新たに見出しました。

SLEは皮膚や粘膜,腎臓や心血管の炎症など全身性の炎症病変を特徴とする自己免疫疾患です。中でも中枢神経ループスと呼ばれる中枢神経症状を発症する場合があり,抑うつ症状などの神経精神症状を伴います。研究グループは,抑うつ症状を伴うSLEモデルマウスの脳内に老化した神経細胞が蓄積していることを明らかにしました。さらに,老化した神経細胞は脳内の炎症を助長し,抑うつ症状の原因の一つになることが推測されました。そこで,老化細胞を選択的に除去可能な薬剤(老化細胞除去薬)の一つであるフィセチンに着目し,SLEモデルマウスの抑うつ症状への改善効果を検討しました。フィセチンは野菜やフルーツに含まれるポリフェノールの一種です。フィセチンをSLEモデルマウスに経口投与すると,脳内の老化細胞が減少し,炎症が抑制されると同時に,抑うつ症状の改善に有効であることがわかりました。

本研究成果は,これまで不明な点が多く残されていたSLEの中枢神経症状である抑うつ症状に老化細胞の蓄積が関与している可能性を明らかにしました。また,フィセチンの経口投与によって脳内の老化細胞を除去すると抑うつ症状が改善されたことから,これらの成果がSLEの中枢神経症状の新しい治療法の発展につながることが期待されます。

なお,本研究成果は,2021113日(水)公開のFrontiers in Immunology誌にオンライン掲載されました。

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全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスの抑うつ症状がフィセチン経口投与により改善