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食欲を抑える神経細胞の一種を発見~肥満治療への貢献に期待~(獣医学研究院 助教 戸田知得)

2021年12月1日

ポイント

●マウスがエサを食べた1時間後に視床下部背内側核で活性化する神経細胞を発見。
●この神経細胞の活動を人工的に増加させると食事量が低下し,抑制すると食事量が増加。
●肥満の予防・治療法開発に期待。

概要

北海道大学大学院獣医学研究院の戸田知得助教らの研究グループは,視床下部(全身代謝・体温・食欲などを司る脳の一部)の背内側核と呼ばれる神経核において,食後に活性化し食欲を抑える働きがある神経細胞を発見しました。

脳の中でも視床下部は食欲の調節に重要であり,食欲を増加または抑制する様々な神経細胞が報告されてきました。しかし,これまでの研究の多くは遺伝子欠損マウスを用いた実験が多く,生まれる前から一つの遺伝子が欠損していると神経細胞や神経回路の発生・発達に影響を及ぼす場合もあるため,生理的な条件で食欲を調節する神経が十分に解明されているとは言えません。

本研究グループは,活性化した神経細胞を蛍光タンパク質で標識できるマウスを使って,食後に脳内のどの神経細胞が活性化するかを調べました。その結果,食後に活性化神経が増加していたのは,これまで満腹中枢と言われていた視床下部の腹内側核や弓状核ではなく背内側核でした。食後に活性化した背内側核の神経細胞を別の日に人工的に活性化するとマウスの食事量が低下し,人為的な抑制は食事量を増加しました。また,この神経細胞を活性化させると場所嗜好性が変化したことから,心地よい感情などにも影響を与えることが示唆されました。この神経に発現する遺伝子を調べるとプロダイノルフィン及びCCKを発現するグルタミン酸作動性神経であることがわかりました。この神経細胞の発見により,肥満の予防・治療開発への貢献が期待されます。

本研究成果は,20211030日(土)公開のMolecular Metabolism誌に掲載されました。

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マウスにおいて満腹感に関わる背内側核の神経細胞