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シミュレーショントレーニングによる手術パフォーマンスの向上・患者安全の促進を世界で初めて証明〜最大限の教育効果と患者安全の両立を目指すこれからの手術教育方法~(医学研究院 准教授 安部崇重)

2021年12月20日

ポイント

●国際共同研究(無作為化比較試験)において手術シミュレーショントレーニングの教育効果を評価。
●シミュレーション介入群で実際の手術でのパフォーマンスの向上,患者合併症発生率の軽減を証明。
●シミュレーションの教育効果を高いエビデンスレベルで証明,他の術式の教育でも利用を期待。

概要

北海道大学大学院医学研究院腎泌尿器外科学教室の安部崇重准教授,篠原信雄教授らの研究グループは,英国キングズ・カレッジ・ロンドンを中心に行われた外科手術シミュレーショントレーニングの有用性に関する国際共同研究の結果をEuropean Urologyに論文報告しました。

今回の対象術式である尿管鏡手術は,主に尿路結石手術で必要になる手術技術で,世界中で広く施行されています。この術式の執刀経験数10例以下,かつシミュレーショントレーニングの経験のない医師をリクルートし,シミュレーショントレーニング介入群と,従来のオンザジョブトレーニング(実際の手術を通してのトレーニング)群に無作為に振り分けました。シミュレーショントレーニング介入群では,尿管鏡手術を独立した術者として施行する上で必要な知識に関する座学を受講後,シミュレーショントレーニングが行われました。本学では,クリニカルシミュレーションセンターにおいて,ドライボックスを用いた尿管鏡トレーニングが行われました。その後,実際の手術室で,手術鉗子を用いた模擬尿路結石の抽出など,さらに実践的なトレーニングが実施されました。

トレーニング終了後,18ヶ月の観察期間において執刀した症例で,術中のパフォーマンス,周術期の合併症に関する情報が前向きに集積されました。結果,シミュレーショントレーニング介入群で,パフォーマンスが向上し,合併症が有意に少ないことが観察されました。

本研究は,初学者に対して手術シミュレーショントレーニングを行うことで,実際の手術でもパフォーマンスの向上,手術安全の向上が得られることを高いエビデンスレベルで証明した世界初の研究結果です。他の術式における手術教育方法に関しても大きな影響を与える研究結果であると考えられます。

なお,本研究成果は,20211114日(日)公開のEuropean Urology誌に掲載されました。

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(左)ドライボックスを用いた軟性尿管鏡シミュレーショントレーニング
場所:北海道大学大学院医学研究院クリニカルシミュレーションセンター
(右)実際の手術室を利用した,より実践的なシミュレーショントレーニング