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半導体界面の特異電子構造の解明に成功~今後の太陽電池やLED開発への貢献に期待~(工学研究院 教授 渡辺精一)

2022年1月13日

ポイント

●水と光のみを用いた半導体ナノ構造の作製に成功。
●異種半導体接合(ヘテロ構造)による光起電力の発現効果を解明。
●今後の半導体デバイス開発ならびに水と光を用いた持続可能な材料創製技術の進展に期待。

概要

北海道大学大学院工学研究院エネルギー・マテリアル融合領域研究センターの渡辺精一教授と張 麗華助教,電子科学研究所のジェーム・メルバート助教らの研究グループは,水と光のみを用いた水中結晶光合成(SPSC)という新たに開発した手法により,良質な界面からなる3次元半導体(ヘテロエピタキシャル)構造の作製に成功しました。これを用いて,異種の半導体界面で起こる特異な光機能発現の機構を解明するため,電子顕微鏡と計算解析(第一原理計算)を駆使した原子レベルの構造解析,電子分布,光物性の詳細解析を行い,界面での特異な電子構造の存在を明らかにしました。

これまで半世紀近くの長い間,異種半導体界面については多くの研究がなされており,界面の電子(電位)状態を表す特異性としてフェルミ準位の固定(ピニング)効果が知られていましたが,これが界面上での格子欠陥によるものなのか,界面ダイポールとよばれる電子分布の分極的なふるまいによるものかは不明でした。

そこで本研究では,紫外光を利用した水中結晶光合成法により,良質な異種界面(ヘテロエピタキシャル)構造を作製することに成功し,これを用いて,たとえ原子配列の整合性が良い界面における場合でも,界面を挟んだ対称性が破れ,不整合な電荷密度分布(ICCD: Incommensurate Charge Densityと命名)が生じていることを明らかにしました。これにより,界面ダイポールの効果とそれに伴う見かけ上の疑似的欠陥生成現象により,固有の界面エネルギー準位が形成され,優れた光機能性が発現していることを解明しました。作製した3次元半導体デバイスは,特に可視光域での優れた光特性を示すため,今後は太陽光を利用したエネルギーデバイス材料としての応用が期待できます。

なお,本研究成果は,2022年1月7日(金)公開のApplied Materials Today誌にオンライン掲載されました。

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今回作製したZnO/CuO(酸化亜鉛/酸化銅)のヘテロ接合半導体ナノ構造:nano-forest
光ガルバニック効果を利用したSPSC(G-SPSC)により光と水を用いて作製。
ヘテロ接合界面において,不整合電荷密度分布(ICCD)効果により界面ダイポールが形成。