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日本沿岸の熱帯性魚種の詳細な分布推定・予測に成功~沿岸の地方自治体等での地球温暖化適応策の策定への貢献に期待~(北方生物圏フィールド科学センター 博士研究員 須藤健二,地球環境科学研究院 准教授 藤井賢彦)

2022年1月11日

ポイント

●熱帯化による熱帯性魚種の生息地の高解像度での推定・予測に成功。
●熱帯化の負の影響を回避するためにはCO2を含む温室効果ガスの大幅削減が有効であると示唆。
●沿岸の地方自治体等で地球温暖化適応策を講じる上での直接的な貢献に期待。

概要

北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの須藤健二博士研究員と仲岡雅裕教授,同大学院環境科学院の前原せり菜氏(研究当時)と同大学院地球環境科学研究院の藤井賢彦准教授の研究グループは,地球温暖化にともなう海水温上昇により,日本の沿岸地域で熱帯性魚種の分布が将来的に拡大することを詳細に予測しました。有毒魚としてソウシハギ(Aluterus scriptus)とアオブダイ(Scarus ovifrons),草食魚としてノトイスズミ(Kyphosus bigibbus)とアイゴ(Siganus fuscescens),観賞魚としてハマクマノミ(Amphiprion frenatus)とトゲチョウチョウウオ(Chaetodon auriga)に対してそれぞれの分布推定と予測を行ったところ,今後,CO2を含む温室効果ガスの大幅削減を行わない場合,今世紀末には日本沿岸での生息地が現在よりも最大2倍程度拡大する一方,温室効果ガスを大幅削減する場合はその生息地が現在から大きく変化しないことがわかりました。本結果成果は,パリ協定に従うなど,温室効果ガスの排出量削減に意欲的に取り組むことで,将来の沿岸地域の地球温暖化影響を大きく緩和できることを示唆しています。さらに,数kmの高空間解像度の結果は,沿岸地域の地方自治体等が気候変動適応策を策定する際の科学的指針として直接利用することができると期待されます。

なお,本研究成果は,202215日(水)公開のFrontiers in Built Environment誌に掲載されました。

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日本沿岸の熱帯性の有毒魚,草食魚,観賞魚の現在の生息場所と,温室効果ガスの高排出(RCP 8.5)シナリオに基づく今世紀末の生息適地