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シリコン(Si)の同素体開発に新たな進展~太陽光発電やイオン電池等,籠状のシリコン同素体の特性を利用した応用開発に期待~(電子科学研究所 助教 藤岡正弥)

2022年1月5日

北海道大学
東北大学
茨城大学

ポイント

●Siの籠状構造を持つNa24Si136からNaのみを抜き出した巨大単結晶の合成に成功。
●今後さらに巨大化させた単結晶Na24Si136に対して,汎用的に利用可能な手法を開発。
●イオンの拡散を制御した新規準安定物質探索の加速に期待。

概要

北海道大学電子科学研究所の藤岡正弥助教,岩崎 秀博士らの研究グループは,東北大学金属材料研究所の森戸春彦准教授,茨城大学理工学研究科の小峰啓史准教授らと共同で,Na24Si136の化学式で表される巨大単結晶から,Naのみを均質に抜き出す新たな合成プロセスを開発しました。

Na24Si136から完全にNaを抜き出すことができれば,Siで形成される籠状の構造のみが残り,現在半導体産業に広く普及しているダイヤモンド構造のSid-Si)の同素体と見なすことができます。d-Siは太陽光発電の基板材料としても用いられていますが,この籠状構造のSi同素体は,より多くの太陽光を吸収するため,さらに高い特性の実現が期待されます。また,Siのユニークな籠状構造は,結晶内にイオンを受け入れる安定サイトとして機能する可能性を秘めており,イオン電池の電極材料等,様々な応用開発が期待されます。

これまでNa24Si136からNaを抜くために,真空下で熱処理する方法が取られてきました。しかし,近年実現したmmオーダーの巨大単結晶に対して真空熱処理を施しても,単結晶の中心部分にあるNaは取り出せないことがわかりました。そこで本研究では,Naのイオン伝導特性が高いNASICON材料に,高電圧を印加することでNaの欠乏層を形成し,この領域をNa24Si136と接触させることで,Na24Si136から自発的にNaが拡散・排出される環境を作り出しました。電圧の印加により,この欠乏層のNa濃度を常に低い状態に維持することで,結晶サイズに関わらず,Na24Si136からNaが排出し続ける状態を原理的に実現することが可能です。今後さらに巨大な単結晶の開発が進むことで,このシリコン同素体の特性を利用した応用開発が進展すると期待されます。

なお,本研究成果は,20211227日(月)公開のAdvanced Materials誌に掲載されました。

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単結晶Na24Si136が形成する籠状構造からNaが拡散する様子