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ウイルス学と薬物送達学を融合させた対ウイルス戦略~パンデミックウイルスに対するナノ医薬品開発への貢献に期待~(薬学研究院 助教 中村孝司)

2022年2月4日

ポイント

●パンデミック呼吸器感染ウイルスの性質や生態を包括的に解説。
●ウイルス学者と薬物送達学者がパンデミックウイルスに対する理想のナノ医薬品を議論。
●脂質ナノ粒子を利用したユニバーサル人工生ワクチンを紹介。

概要

北海道大学大学院薬学研究院の中村孝司助教,原島秀吉教授,同大学院獣医学研究院の磯田典和准教授,迫田義博教授らの研究グループは,インフルエンザや新型コロナウイルス感染症に代表されるパンデミック呼吸器感染症に対するウイルス学と薬物送達学を融合させた治療戦略に関する総説論文を発表しました。

パンデミック呼吸器感染ウイルスの代表はインフルエンザウイルスとコロナウイルスです。インフルエンザウイルスは,スペイン風邪など古くから世界的パンデミックを引き起こしている呼吸器感染ウイルスであり,季節性インフルエンザにおいても毎年多くの死者を出しています。コロナウイルスは,2019年12月より世界的パンデミックを引き起こしている呼吸器感染ウイルスで,新型コロナウイルスとして未だに終息が見通せない状況が続いています。残念ながら,両ウイルスに対して十分な感染予防効果を示すワクチンや高い治療効果を示す抗ウイルス薬の開発には成功していません。この原因の一つにウイルスの性質や生態が挙げられます。一方で,mRNAワクチンといった最新の薬物送達技術を利用した,新しいタイプの医薬品が突破口になる可能性が見えてきました。

本総説論文では,ウイルス学者と薬物送達学者が議論し,インフルエンザやコロナウイルスなどのパンデミック呼吸器ウイルスに対する理想の医薬品開発戦略を紹介しています。ウイルス学の観点からパンデミック呼吸器ウイルスの性状や疫学を包括的に解説し,薬物送達技術の一つである脂質ナノ粒子を利用したユニバーサル人工生ワクチンについて紹介しています。

なお,本研究成果は,2022年2月3日(木)にJournal of Controlled Release誌にオンライン掲載されました。

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ウイルス学に基づいた薬物送達システムの設計により,パンデミック呼吸器感染ウイルスに対する免疫応答を効果的に活性化することができるワクチンや治療薬の開発への貢献が期待される。