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樹木はどこまで高く成長することができるのか?~数理モデルで「最大高さ」の導出に成功~(工学研究院 教授 佐藤太裕)

2022年2月8日

ポイント

●樹木が高さを確保するために重さを賢く配分していることを,構造力学の視点から初めて解明。
●密度が連続的に変化する計算モデルを導入し,枝葉の影響を考慮した最大高さを初めて定式化。
●生物の智恵を取り入れた新しい構造設計や新材料創成への応用に期待。

概要

北海道大学大学院工学院修士課程の金浜瞳也氏と同大学院工学研究院の佐藤太裕教授の研究グループは,樹木が重い体を有しているのにも関わらず,安定して,光合成のために高く大きく成長していることに着目し,そこに樹木が成長過程で獲得してきた「重力に効率よく打ち勝つための仕組み」が秘められていると考え,重量物の配分バランスと実現可能な最大高さの関係を構造力学的な観点から紐解きました。

本研究では,樹木がもつ多様な重量分布を表現できるよう,密度が連続的に変化する数理モデルを構造力学の理論をベースに構築し,重量物の配分バランスと実現可能な最大高さの関係を定式化しました。その結果,樹木は,生存戦略のために光合成を効率化させるべく,葉がバランス良く光を受けるように配置しつつ,高さを獲得するという目的を阻害することのないよう,極めて賢く枝葉を分布させていることが明らかになりました。

この成果は,樹木が進化の過程で獲得してきた「重力に効率よく打ち勝つための智恵」の一端を明らかにしたものです。次世代で求められる自然と調和する構造デザインを開発していくために,自然との関わり方を誰よりも知っている植物たちに訊ねることは,極めて合理的なアプローチといえます。本研究で解明された樹木の力学的合理性は,植物が持つ巧妙な重量配分の仕組みを模倣した,自然に優しい経済的な構造デザインや新材料の創製へと繋がります。さらに,本研究で構築した数理モデルは,重量分布と最大高さに関する普遍的な力学法則を示すとともに,複雑な力学問題を解決するための強力なツールとなり得るなど,極めて幅広い分野における応用可能性が期待されます。

本研究成果は,2022年2月7日(月)公開のScientific Reports誌にオンライン掲載されました。

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本研究の概念図