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消えゆくアフリカの氷河上にユニークな生物群を発見〜氷河にのみ生息可能な氷雪藻類・コケが氷河融解を加速させる恐れ〜(北方生物圏フィールド科学センター 准教授 植竹 淳)

2022年2月21日

ポイント

●消滅が目前に迫るアフリカ・ウガンダのルウェンゾリ山地の氷河から特殊な生物群を発見。
●氷河上の生物群と,それらの生産物が氷河の融解を加速させ,消滅を早める可能性を示唆。
●今後,氷河環境と氷河生物のバランスの解明に期待。

概要

北海道大学北方生物圏フィールド科学センター(研究当時:国立極地研究所)の植竹 淳准教授と千葉大学大学院理学研究院の竹内 望教授らの研究グループは,アフリカ・ウガンダのルウェンゾリ山地の氷河で,この氷河上に生息している生物群を初めて発見し,その生物の活動によって形成される暗色物質が,氷河の融解にも関与していることを明らかにしました。

アフリカ大陸中央部に位置するウガンダのルウェンゾリ山地は,ケニア山やキリマンジャロ山とともに,アフリカで氷河が存在する地域の一つです。赤道直下にも関わらず氷河が存在するのは,標高が高く年間を通して寒冷な気候であるためです。しかしこの氷河は,近年の環境変動の影響を受けて急速に縮小しており,近い将来に消滅することが予想されています。研究グループは,氷河の表面にこれまでに報告がされていない未記載種を含む雪氷藻類やコケの無性芽が繁茂していることを発見しました。さらにその生物の生産物が鉱物と混ざり暗色物質を形成していることを明らかにしました。氷河上の表面の日射の反射率を測定した結果,この暗色物質が氷河表面を黒くし,反射率を下げていることがわかりました。本成果は,ウガンダの氷河に生息している特殊な生物群が大量の暗色物質を作り出し,氷河融解の加速化と,氷河の消失を早める可能性を示しています。

なお本研究成果は,2022217日(木)にFrontiers in Earth Science誌にオンライン掲載されました。

論文名:Spatial distribution of unique biological communities and their control over surface reflectivity of the Stanley Glacier, Uganda (ウガンダ,スタンレー氷河上の氷河表面反射率を変化させる特殊な生物群集の空間分布)
URLhttps://www.frontiersin.org/articles/10.3389/feart.2022.740998/full

詳細はこちら

ルウェンゾリ山地にあるスタンレー氷河。特に標高が低い左側の氷河表面が生物によって作られた暗色物質に覆われ,融解が進んでいることがわかる。