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インドールなどの化学的に安定なヘテロ芳香環に二酸化炭素を二分子導入する新手法を開発~計算科学を用いた反応設計~(創成研究機構化学反応創成研究拠点 特任准教授 美多 剛)

2022年2月22日

北海道大学
科学技術振興機構

ポイント

●AFIR法などの量子化学計算を巧みに用いて,開発前例のないダブルカルボキシル化反応を開発。
●豊富で安価,低毒性な二酸化炭素(CO2)を利用した化学合成に成功。
●安定なヘテロ芳香環を原料として,医農薬品の合成中間体として期待される新物質の合成に成功。

概要

北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の美多 剛特任准教授及び同拠点拠点長・同大学院理学研究院の前田 理教授らの研究グループは,二酸化炭素(CO2)を炭素資源として用いて,インドールなどの化学的に安定なヘテロ芳香環にCO2を二分子導入する新反応の開発に成功しました。

CO2は地球温暖化物質として知られ,世界的に排出規制が強化されつつある化合物ですが,有機合成化学の観点からすると安価で低毒性,かつ尽きることのない魅力的な炭素資源です。また,近年のカーボンニュートラル戦略に立脚した,CO2の効率的かつ大規模なリサイクルが求められています。すなわち,CO2から低コストかつ効率的に,持続可能社会を支えるための付加価値の高い有機化合物を創出し続ける研究は,天然資源の少ない日本にとって非常に重要です。

今回,研究グループは電気化学による電解還元法を用いることで,インドールなどの化学的に安定なヘテロ芳香環を脱芳香族化しながら,CO2を二分子導入する新しい形式のダブルカルボキシル化反応の開発に成功しました。使用する原料の酸化還元電位や反応機構を量子化学計算(人工力誘起反応法(AFIR法)を含む)で予想しながら反応開発を進めることで,通常年単位の開発時間を要する新反応開発において,わずか8か月でその開発に成功しました。

なお,本研究成果は, 2022年2月21日(月)公開のJournal of the American Chemical Society 誌のオンライン版にArticleとして掲載されました。

論文名:Electrochemical Dearomative Dicarboxylation of Heterocycles with Highly Negative Reduction Potentials(還元電位の極めて大きいヘテロ芳香環の脱芳香族電解ダブルカルボキシル化反応)
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.1c13032

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ヘテロ芳香環に対するダブルカルボキシル化反応の開発