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北極圏の海氷融解早期化は大型プランクトンを減少させる~気候変動による海洋生態系への影響の理解向上へ貢献~(水産科学研究院 助教 松野孝平)

2022年2月24日

ポイント

●2018年の北部ベーリング海にて,海洋生態系が変化していることを船舶観測で発見。
●海氷融解早期化によって大型の動物プランクトンが減少するプロセスを解明。
●気候変動による海洋生態系への影響の理解に大きく貢献。

概要

北海道大学大学院水産科学研究院の松野孝平助教,山口 篤准教授らの研究グループは,北部ベーリング海において海氷衰退が早期化すると,大型の動物プランクトンの割合が減少し,高次捕食者の餌環境が悪化することを明らかにしました。

大陸棚である北部ベーリング海は,プランクトンが豊富に生息しており,ズワイガニ,タラバガニ,マダラが漁獲される世界有数の好漁場です。この海は,例年12月から4月までは海氷に覆われます。しかし,2018年の春は,海氷が例年より1か月ほど早く溶け,それによって様々な海洋生物に悪影響が見られたことが知られています。特に魚類,海鳥,鰭脚類などの高次捕食者では,個体数の減少や栄養状態の悪化が報告されましたが,なぜ海氷が早く溶けると悪影響がでるのか,原因については推察の域を出ていませんでした。そこで研究グループは,海氷融解が例年通りであった2017年と,海氷融解が早かった2018年に北部ベーリング海で海洋調査を行い,海氷が早く融解すると魚類の餌として有用な大型の動物プランクトンが減少すること,それにより高次捕食者が受け取るエネルギーが減少することを解明しました。

本研究の成果は,気候変動が海洋生態系を改変する過程の一端を明らかにしており,変わりつつある海洋生態系の将来予測の精度向上に大きく貢献する貴重な知見となります。

なお,本研究成果は,2022年2月22日(火)公開のFrontier in Marine Science誌に掲載されました。

論文名:Effects of early sea-ice reduction on zooplankton and copepod population structure in the northern Bering Sea during the summers of 2017 and 20182017年及び2018年夏季の北部ベーリング海において動物プランクトンとカイアシ類個体群へ海氷融解早期化が与える影響)
URLhttps://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmars.2022.808910/full

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左上:北部ベーリング海での調査を行った北海道大学水産学部附属練習船おしょろ丸。
左下:動物プランクトン採集に用いた4NORPACネット。
中央:本研究で最優占した動物プランクトンのカイアシ類。
右:調査海域である北部ベーリング海と周辺の地図。