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西暦3000年までのグリーランド氷床の変動を予測~このまま温暖化が進むと氷床の体積が半分に減る可能性を示唆~(低温科学研究所 教授 グレーべ・ラルフ)

2022年3月25日

ポイント

●21世紀後期の気候がその後も続いた場合のグリーランド氷床変化を氷床モデルで予測。
●21世紀内の温暖化進行で,数百年後のグリーランド氷床の融解と海面水位数が上昇。
●効果的な気候変動の緩和策で,グリーンランド氷床の大規模な崩壊は防止可能。

概要

北海道大学低温科学研究所のグレーべ・ラルフ教授とチェンバース・クリストファー博士は,西暦3000年までのグリーンランドの氷床の変動についてシミュレーションを行い,21世紀の温暖化がもたらす長期的な影響について調べました。

これまで,本研究チームも参画する氷床モデル比較相互プロジェクト(ISMIP6)は,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書に研究内容を提供してきましたが,その氷床変動計算は西暦2100年まででした。本研究では,西暦2100年以降は温暖化の傾向に変化がないとの仮定のもと,西暦3000年までのシミュレーションを行いました。「温暖化進行」経路シナリオで12の数値実験,「地球温暖化ガス排出量の削減」の経路シナリオでは2つの実験をそれぞれ行いました。「温暖化進行」のシナリオでは,氷の損失の海面水位相当(SLE)は,12の実験のアンサンブル平均で1.8 mに上りました。「ガス排出量削減」のシナリオでは,氷の損失は,2つの実験のアンサンブル平均で0.25mSLEに留まることがわかりました。

本研究の結果では,温暖化は,たとえ21世紀末に進行が停止したとしても,効果的な気候変動緩和策が取られない限り,その後数百年にわたりグリーランドの氷床への影響があり,世界的な海面上昇につながる危険を示唆しています。

本研究は,2022314日(月)公開のJournal of Glaciology誌にオンライン掲載されました。

論文名:Mass loss of the Greenland ice sheet until the year 3000 under a sustained late-21st-century climate21世紀後半の持続的な気候下における3000年までのグリーンランド氷床の質量喪失)
URL:https://doi.org/10.1017/jog.2022.9

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西暦1990年から3000年までのグリーンランド氷床の体積減少予測