2022年3月28日
ポイント
●がんを養う腫瘍血管を特異的に標的とした新しいナノドラッグデリバリ ー システムを開発 。
●Biglycanの標的化により腫瘍血管の正常化やがん線維化の抑制などの効果が期待 。
概要
北海道大学大学院歯学研究院の間石奈湖助教,樋田京子教授,同大学院薬学研究院の原島秀吉教授,北海道大学病院の樋田泰浩准教授らの研究グループは,腫瘍血管が発現する糖タンパクBiglycanを標的とした腫瘍血管標的ナノドラッグデリバリーシステムを開発し,Biglycan阻害により抗腫瘍効果,血管新生阻害効果,さらに癌微小環境の正常化などの治療効果が期待できることを明らかにしました。
癌組織における血管は,未熟な構造をしているため,血管を介して運ばれる酸素や抗癌剤が血管外に漏れてしまい低酸素になることや抗癌剤治療効果が不十分となること,過度な線維化が起きているため,がん細胞の足場となり悪性化を誘導することや癌細胞を攻撃する免疫細胞が十分に遊走できないことが知られています。これらは癌治療の奏功性低下に繋がるため,解決すべき課題の一つです。
研究グループは腫瘍血管内皮細胞が発現しているBiglycanを特異的に抑制すると,血管が正常化し癌組織内が酸素化すること,癌の線維化が抑制されることなどを明らかにしました。マウスの腫瘍モデルにおいて腫瘍血管Biglycan阻害により治療効果が得られたことからBiglycanは新たな癌治療の標的となることが期待されます。
なお,本研究成果は,2022年3月9日(水)公開のCancer Science誌にオンライン先行公開されました。
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本研究成果の概要図