2022年3月25日
ポイント
●目立つ水玉模様を持つコモンチョウは,水玉模様に強烈に惹かれる性質をもつことが判明。
●水玉模様への反応は,仲間個体を視認することと,餌を見つけることの両方に関連。
●動物の体表の模様がなぜ進化したのかについて,新視点を提供。
概要
北海道大学大学院理学研究院の相馬雅代准教授らの研究グループは,模様に対する選好性が鳥にあることを見出しました。
一般に,抗い難いほど注意を惹くものとは,個体あるいは個人にとって重要な意味を持つ何かであるはずです。そのため,単純なモノクロ印刷の水玉模様が鳥の注意を惹くとは想定されていませんでした。しかしコモンチョウは,着物の「小紋」柄のような細かい水玉模様を持ちます。また,これまでの魚類などの研究で,餌によく似た柄を体表に持つことで,配偶相手の注意を惹きつける事例が報告されてきました。実は,コモンチョウの柄も餌とよく似ています。そこで,餌や羽の柄よりもずっと単純な,黒地に白い水玉を印刷した紙を用意し,白黒のストライプを対象刺激として,どちらをどのぐらい見るか検討しました。その結果,コモンチョウは,お腹がすいていてもすいていなくても,非常に強く水玉模様に惹きつけられることがわかりました。
これまで,鳥類の視覚能力に関する検討は多くなされてきましたが,特定の視覚刺激に対し生得的な「好み」があるとは全く想定されていませんでした。自発的な選好注視反応に着目して初めて明らかになった知見です。コモンチョウ以外の鳥種においてどのような「好み」があるか検討することができれば,今後一層,鳥が見ている世界への理解が深まることが期待されます。
なお,本研究成果は,2022年3月16日(水)公開のAnimal Cognition誌にオンライン掲載されました。
論文名:Star finches Neochmia ruficauda have a visual preference for white dot patterns: a possible case of trypophilia(コモンチョウは白い水玉模様に視覚選好をみせるー「集合恐怖トライポフォビア」とは真逆の可能性)
URL:http://dx.doi.org/10.1007/s10071-022-01609-5
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