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低侵襲の留置が可能なX線マーカーの開発に初めて成功~より多くの患者さんへのがん放射線治療の適応に期待~(工学研究院 教授 米澤 徹)

2022年4月27日

ポイント

●骨の成分ヒドロキシアパタイトを主とする骨充填剤粉末と金ナノ粒子を均一に複合化することに成功。
●複合化粉末を分散させ、外径1mm以下の注射針を通して注入し,X線マーカーとして利用可能。
●X線マーカーを留置する際の侵襲を低減し,放射線治療効果のさらなる向上を期待。

概要

北海道大学大学院工学研究院の米澤 徹教授,宮本直樹准教授,及び北海道大学病院の白圡博樹教授らの研究グループは,IGRT(画像誘導放射線治療)に用いられる植込み型病変識別マーカ(X線マーカー)として,骨充填剤であるバイオペックス-RHOYA Technosurgical製、以下「バイオペックス」と記載)に金ナノ粒子を均一に複合化させた粉末を作製することに成功しました。

従来,IGRTではX線マーカーとして1.5‒2mmの金球が使われており,これを腫瘍患部付近に導入するためには外径が約2‒2.5mm程度のカテーテルが用いられていました。本研究により得られた粉末は,それを固化する練和剤に分散させることにより,外径が1mm以下の注射針で腫瘍近傍に固定化することが可能となり,これまでよりもずっと低侵襲なマーカーとなることが明らかとなりました。

この粉末を練和液に分散させ,外径:0.8mm21Gの注射針で人体模擬ゲル内に導入し固定化したところ,従来の直径1.52mmの金マーカーと同様の視認性が得られました。

なお,本研究成果は,2022年2月17日(木)公開のACS Applied Bio Materials誌に掲載されました。

論文名:Preparation of Biopex-supported gold nanoparticles as a potential fiducial marker for image-guided radiation therapy(画像誘導放射線治療に用いる位置補正用マーカーとしてのバイオペックス担持金ナノ粒子の合成)
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsabm.1c01271

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図:バイオペックスー金ナノ粒子複合体を腫瘍部に注射し固定化。外径0.81mmの21Gの注射針を用いても,十分な視認性のある金マーカーとなっていることがわかる。