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食事時刻が睡眠覚醒リズムを調節:時間隔離実験により世界ではじめて証明~ヒト生物時計の構造と機能の全容解明に貢献~(教育学研究院 准教授 山仲勇二郎)

2022年5月9日

ポイント

●時間隔離実験室を用いて食事スケジュールが睡眠覚醒リズムの同調因子となることを発見。
●食事スケジュールは生物時計中枢に制御される概日リズムに対する作用は弱いことを発見。
●生体リズムの乱れが原因となる睡眠障害や概日リズム障害を予防する行動指針の作成に期待。

概要

北海道大学大学院教育学研究院の山仲勇二郎准教授と本間研一北海道大学名誉教授の研究グループは,時間隔離実験室とよばれる外部からの時刻情報を完全に取り除いた恒常環境下で自由に生活させた際に,1日1回決められた時刻に食事を取ると睡眠覚醒リズムが食事スケジュールに同調するが,概日振動体に制御される深部体温,メラトニン,コルチゾルのリズムは食事スケジュールに同調しないことを発見しました。

ヒトの生物時計は,時間隔離実験室のような恒常環境下では睡眠覚醒リズムと概日リズムが異なる周期を示す,内的脱同調とよばれる現象が観察されます。また,これまでに厳密な生活スケジュールおよび運動スケジュールなどの周期的社会的因子は睡眠覚醒リズムを同調させる一方,概日リズムは同調させないことが報告されてきました。これらのことから,ヒトの生物時計の睡眠覚醒リズムと概日リズムを発振する振動体は異なり,2つの振動体が光と社会的因子に対して異なる反応性を示すとする2振動体モデルが提唱され,その構造と機能解析が進められてきました。しかし,規則正しい食事スケジュールが生物時計に与える影響については,マウスやラットなど夜行性げっ歯類を用いた研究はありますが,ヒトでは長い間よくわかっていませんでした。今回の研究成果は,ヒトの生物時計に対する食事スケジュールの影響を明らかにし,その構造と機能の全容解明に寄与するものです。さらに,本研究の成果は、生体リズムの乱れが原因となる睡眠障害や,概日リズム障害を予防する行動指針の作成に寄与することが期待されます。

なお,本研究成果は,2022年4月26日(火)公開のAmerican Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology誌に掲載されました。

論文名:A fixed single meal in the subjective day prevents free-running of the human sleep-wake cycle but not of the circadian pacemaker under temporal isolation (時間隔離実験室内での1日1回の食事スケジュールは概日リズム中枢ではなく睡眠覚醒リズムのフリーランを阻止する)
URL:https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/ajpregu.00262.2021

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図1.[A]隔離実験室内での睡眠覚醒リズム,メラトニンリズムピーク時刻,深部体温の低体温相の典型例[B]1日1食スケジュール前後の睡眠覚醒リズム指標である睡眠中点と概日リズム指標であるメラトニンピーク時刻,深部体温最低値時刻の平均値と標準偏差 * p<0.05,**p<0.01 1日1食スケジュール前の平均値に対する統計学的に有意に異なることを示す。