2022年5月9日
北海道大学
岡山理科大学
中川エコミュージアムセンター
ポイント
●パラリテリジノサウルスがテリジノサウルス科の新属新種であることを解明。
●テリジノサウルス科は進化と共に爪の役割が変化し,枝に引っ掛けて葉を食べていたことを示唆。
●東アジアのテリジノサウルス類は,長い間より広い生息域かつ多様な環境に適応していたことを示唆。
概要
北海道大学総合博物館の小林快次教授,岡山理科大学の高崎竜司研究員,アンソニー・フィオリロ(米国・サザンメソジスト大学、北海道大学客員教員),中川町エコミュージアムセンターの疋田吉識センター長らの研究グループは,2000年に北海道中川町の白亜紀後期カンパニアン期(約8,300万年前)の地層から発見されていた恐竜化石の研究を行いました。本研究によってこの恐竜化石が,マニラプトル類の中でも,進化型のテリジノサウルス類(テリジノサウルス科)であることを明らかにし,新属新種として「パラリテリジノサウルス・ジャポニクス(日本の海岸に棲むテリジノサウルスという意)」と命名しました。
テリジノサウルス類の爪(末節骨)の形に基づいた解析を行ったところ,筋肉のつき具合と爪の先に力を加える効率が,テリジノサウル類の進化の中で小さくなっていったことを明らかにしました。特にパラリテリジノサウルスやテリジノサウルスは値が小さく,弱い力で熊手のように近くの枝をたぐり寄せて葉っぱを食べていたという可能性を示唆しました。
パラリテリジノサウルスは,日本で発見されたテリジノサウルス類として3例目で,日本において最も新しい時代からのテリジノサウルス類の化石となります。パラリテリジノサウルスは,アジアの最東端の記録であり,海成層から発見されたテリジノサウル類としてアジア初の記録及び世界で2例目の記録です。これらのことから,日本にはテリジノサウルス類がより長い期間生息していたこと,アジアではテリジノサウルス類がより広い生息域を持っていたこと,そしてより多様な環境に適応していたことがわかりました。
なお,本研究成果は,2022年5月3日(火)オンライン公開のScientific Reports誌(Nature Publishing Group)に掲載されました。
論文名:New therizinosaurid dinosaur from the marine Osoushinai Formation (Upper Cretaceous, Japan) provides insight for function and evolution of therizinosaur claws(白亜紀後期の蝦夷層群オソウシナイ層から産出したマニラプトル類の恐竜が示唆するテリジノサウルス類の爪の機能と進化)
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-022-11063-5
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